モンテ・クリスト伯
デュマの『モンテ・クリスト伯』は116章にわたって展開される物語です。本章は、エドモン・ダンテスが父のもとへ帰郷し、彼不在中の父の困難な境遇についての事実が明かされる場面に焦点を当てています。本章では、謎めいた集落であるカタラン人村が紹介されます。この村は何世紀も前にマルセイユ近郊の岬に定住し、孤立した環境の中でスペインの慣習と言語を守り続けてきた集落です。物語の核心は、エドモン・ダンテス、彼の恋人メルセデス、そして振られた求婚者フェルナンからなる三角関係にあります。エドモンが海から突然戻ってきたことでフェルナンの望みは打ち砕かれ、物語全体の対立を駆動する嫉妬の連鎖が始まります。本章ではまた、エドモンの将来の破滅に関与する共謀者カドルスとダングラールも登場します。本章はまた、エドモン・ダンテスとメルセデスが tavern(居酒屋)を出てからのその後の場面を描き、取り残された人々の嫉妬と陰謀を明らかにしています。この場面は、ダンテスの即将たる結婚とファラオン号の船長への昇進の発表に対して、フェルナン、ダングラール、カドルスの三人が反応する中で、小説全体の筋を駆動する中心的な陰謀を確立しています。
第2章 父と子
この章では、エドモン・ダンテスが父親の元へ帰宅し、彼が不在の間に父親が直面していた困難な状況に関する事実が明かされることに焦点を当てている。
エドモンの帰宅
エドモン・ダンテスはルクレール船長の死後、マルセイユに帰還し、父の慎ましい家へと向かう。父との再会を切望しながら、彼はドラ・ノワイユ通りにある小さな家の暗い階段を高鳴る胸で登っていく。部屋に入ると、老いた父が息子の帰宅にも気づかず、窓辺でナスタチウムとクレマチスの栽培に精を出している。感動的な再会の瞬間、老人は青ざめた顔で震えながらエドモンの腕の中に倒れ込み、思いがけなく息子の姿を見た驚きと喜びに包まれる。
父の貧困が明かされる
会話の中で、エドモンは自分が間もなくファラオン号の船長になるかもしれないと知る。しかし、彼はその不在の間に父親が貧しい暮らしをしていたことを知る。エドモンがワインを所望すると、棚は空っぽであることに気づく。老人は、エドモンが残した二百フランの大部分を隣人のカドルースへの借金の返済に充て、三ヶ月間の生活費としてわずか六十フランしか残らなかったことを打ち明ける。父親の犠牲に心を痛めたエドモンは、金貨と銀貨をポケットからテーブルへぶちまけ、父親の面倒を見ること、そして庭付きの家を買うことを約束する。
カドルースの訪問
近所のカドルースが、エドモンの帰還を祝うために訪ねてくる。エドモンは彼を丁寧にもてなすものの、内心ではカドルースの二枚舌な本性を見抜いている。カドルースは貪欲な目でテーブルに広げた金を見つめるが、エドモンはその金は父親のものだと説明して彼の関心を逸らそうとする。老人はカドルースを熱心に擁護し、彼を情に厚い友人として褒めそやす。しかし、エドモンは警戒を解かず、過去の助力に対して形式的な礼を述べるにすぎない。
昇進とメルセデスについての会話
会話はエドモンの船長への昇進の見込みへと移る。エドモンは、父親にできるだけ早く会うためにモレル氏の晚餐会への招待を辞退したことを説明する。カドルースが、成功にはお世辞が必要ではないかとほのめかすと、エドモンはあくまで実力で船長の座を勝ち取ると主張する。続いてカドルースは、エドモンがめとろうとしているメルセデスには多くの求婚者がいることをにおわせる。エドモンは最愛の彼女の貞節を擁護し、自分の身分がどうであれ、彼女は決して揺るがず忠実であり続けると確信を述べる。父親の祝福を受けて、エドモンはカタランの集落を訪れ、メルセデスに会うため出発する。
ダングラールとカドルースの陰謀
エドモンドが立ち去った後、カデウスがセナック通りの角でダングラールに合流する。二人は隠し切れない嫉妬を滲ませながら、エドモンドの幸運について語り合う。ダングラールがメルセデスに関する情報を探り始めると、カデウスは彼女が背の高いカタロニアの従兄弟と一緒なのを見かけたと打ち明ける。その含みは、エドモンドに恋愛のもつれが待ち受けているかもしれないことをほのめかしている。陰謀者たちはそれからラ・レゼルヴへと向かい、若い船乗りを陥れる策を練りながら知らせを待つ。
第3章 カタラン人
この章では、何世紀も前にマルセイユ近郊の岬に定住し、孤立した環境の中でスペインの習慣と言語を守り続けてきた、謎めいた入植地であるカタランの村を紹介する。物語は、 Edmond Dantès(エドモン・ダンテス)、彼の愛するメルセデス、そして振られた求婚者フェルナンの三人の間にある三角関係を中心に展開する。エドモンが海から突然帰還したことでフェルナンの望みは打ち砕かれ、小説全体の葛藤を牽引する嫉妬が動き出す。またこの章では、エドモンの将来の没落に関与することになる陰謀者カドルスとダングラールも登場する。
カタロニアの村の歴史と慣習
カタロニアの人々の村は、はるか昔にスペインを離れ、マルセイユ近郊の不毛な海角に定住した神秘的な入植地として描かれており、彼らの子孫は今でもそこで暮らしている。彼らの出自を知る者は誰もいなければ、彼らは未知の言葉を話している。彼らの長は、マルセイユの自治体にこの海角を授けてくれるよう請願し、そこで彼らは古の船乗りたちのように船を浜辺に引き上げた。わずか三か月のうちに、彼らの十二艘か十五艘の船舶の周囲に小さな村が姿を現した。この集落は独特な様式で建設されており、半ばムーア風、半ばスペイン風のものであった。三、四世紀もの間、これらの住民たちはマルセイユの住民から隔離された状態を保ち、互いに婚姻を結び、先祖代々受け継がれてきた独自の風習、衣装、そして言語を守り続けてきた。
メルセデスによるフェルナンの求婚の拒絶
日に焼けたカタロニア風の家の中で、青年フェルナンは、復活祭の日にメルセデスに百回目だと称する求婚を行う。メルセデスは、漆黒の髪と絹のような瞳を持つ美しい若い女性で、毅然としつつも優しく彼を拒絶する。彼女はかねてよりフェルナンに対して、自身は彼をただ兄のようにしか愛していないこと、そして彼女の心は別の人物——水夫の Edmond Dantès(エドモン・ダンテス)に属していることを告げてきたと彼に思い起こさせる。フェルナンはカタロニアの慣習が彼ら同士の結婚を義務づけていると主張するが、メルセデスはそれは単なる慣習であって法律ではないと反論する。彼女はまた、徴兵の対象である彼自身の立場の危うさと、孤児として両親から受け継いだ荒れた小屋と漁網しか持たない自分自身の貧しさとを指摘する。フェルナンが境遇を改善し、彼女のために水夫になるとまで約束したにもかかわらず、メルセデスは揺るぎなく、与えられる以上のことは約束できないと主張する。この会話は、エドモンへの彼女の深い愛と、四ヶ月もの不在中に彼が海で遭難したのではないかという彼女の恐怖を明らかにしている。
フェルナンとカドルス、ダングラールの出会い
メルセデスにはっきりと拒絶されたフェルナンは、苦悶のあまり小屋を飛び出し、木陰のあずまやで葡萄酒を飲んでいるカドルースとダングラールに出会う。半狂乱の彼の姿が二人の注意を引き、彼らはフェルナンも一杯やれと誘う。酒の勢いも手伝って無遠慮なカドルースは、フェルナンが求婚者としてはねつけられたことをあっさりと見抜く。打算的でエドモン・ダンテスの幸運を妬むダングラールは、フェルナンを注意深く観察し、嫉妬と復讐の種を蒔き始める。二人は遠方にエドモンとメルセデスが寄り添う姿を見て取り、ダングラールはフェルナンが恋する人をライバルと過ごす姿を見せられて受ける苦しみの様を一つも見逃さない。やがてエドモンとメルセデスが近づいて旧友たちを結婚式に招待すると、フェルナンはほとんど口もきけないほど動揺する。ダングラールはこの好機を見逃さず、フェルナンのスペイン人らしい激しやすい気性と屈強な体躯がエドモンへの自身の陰謀にどう利用できるかと計算し始める。エドモンの船長への昇進とメルセデスとの結婚を阻むために「一件に一役買って出る」かもしれないとほのめかすダングラールによって、この場面は陰謀の酝酿を確かなものとしている。
エドモンとメルセデスの再会と結婚の計画
エドモン・ダンテスはカタロニアの村に到着し、歓喜のうちにメルセデスと再会する。彼女は駆け寄って彼を迎え入れる。彼女の小屋に入ったエドモンは、フェルナンドが立ち居しているのに気づき、最初は敵かと身構える。しかしメルセデスは、フェルナンドは自分のいとこであり、兄弟同然の者だと告げて安心させる。彼女は、エドモンに万一の災難が降りかかれば自分も崖から身を投げると断言し、その絶対的な意志でもってフェルナンドを抑えつける。エドモンが惜しみなくフェルナンドに友情の手を差し伸べると、嫉妬に狂ったその求婚者は絶望のうちに逃げ出す。それからエドモンとメルセデスは結婚式の段取りを相談する。婚礼の宴はラ・レゼルヴで催されることになっており、その日のうちにエドモンの父の家で前祝いが行われることになっていた。ダングラールがエドモンを「船長殿」と呼びかけると、エドモンは時期尚早のその呼び方を諫め、メルセデスの不吉な警告を引き合いに出す。エドモンは、ルクレール船長の最後の命令に関する急用で、パリへ赴かねばならないことを明かす。カドルースとダングラールはこのことを極秘の外交任務と受け取る。ダングラールはこの情報を注意深く胸に刻み、その陰険な頭脳はすでにそれを己の利益に役立てようと企て始めていた。こうしてこの章は、手を取り合って歩む恋人たちの姿で幕を閉じる。二人は、自分たちに向かって密かに進められている奸計には、まだ少しも気づいていなかった。
第四章 陰謀
「この章は、エドモン・ダンテースとメルセデースが居酒屋を去った後の場面を描写し、残された者たちの嫉妬と陰謀を明らかにしている。この場面は、小説の筋書きの多くを推し進める中心的な陰謀を確立する。三人の男——フェルナン、ダングラール、カデリュース——が、ダンテースの結婚とファラオン号の船長への昇進の知らせに反応する。」。
恋人たちの出発とフェルナンおよびカデリュースの初期反応
ダンガラスは、エドモンとメルセデスがサン・ニコラ砦のかげに消えていくのを見送ると、振り返ってフェルナンに目を向ける。フェルナンは顔色を失い、椅子の上で身を震わせていた。酔いがますます深まったカドルースは、ただ酒盛りの歌を口ごもりながらうなっているだけである。恋人たちの幸福と、振られた求婚者の絶望とのあまりの対比が、これから起こる裏切りの舞台を整えていた。ダンガラスは、フェルナンの苦悩を一目で察し、この若い男の嫉妬心を自分の目的に利用できる好機だと悟る。
フェルナン、メルセデスへの絶望的な愛を告白する
ダンガラスがフェルナンのあからさまな苦しみに詰め寄ると、フェルナンはメルセデスへの絶望的な情熱を包み隠さず告白し、彼女を知ってから「ずっと」——すなわち「最初から」——愛し続けてきたと認める。苦しみの中であっても、フェルナンはダンテスに対して手を下すことはできないと明かす。なぜならメルセデスが、もし婚約者に何か不幸があれば自害すると脅しをかけているからだ。ダンガラスはこの懸念を女の空騒ぎだと片づけて、「間抜けめ」と小さく呟きながら、メルセデスの生死などよりも自分の出世のほうが大事だと計算をめぐらせる。フェルナンはあくまで揺るぎない覚悟を見せ、メルセデスに害が及ぶくらいなら自分が先に死ぬと断言する。
ダングラール、ダンテスを殺さずに結婚を阻止する策略を練る
ダンガラスは、フェルナンを助ける意思のある同情深い友人を装っているが、彼の本当の動機は隠されたままである。恋人たちを引き裂くのに死は必要ないと巧みに示唆し、投獄でも同じ効果が得られると提案する。酔っているにもかかわらずカドルスが刑務所から逃げ出すことは可能だと指摘すると、ダンガラスはその懸念を一蹴し、たとえどのような結果になろうともそれは他人の問題であるかのようにほのめかす。策士はダンテスを妨害する意思を徐々に露わにしていくが、自分自身の関与については、もっともらしく否認できる余地を保ち続ける。
カデリュースの酔った中でのダンテスへの危害への反対
陰謀の進行中、カドルースは障害として立ちふさがる。残された理性が繰り返し、ダンテスを傷つけることに抗うのだ。彼はダンテスを「良き男」と断言し、自分がかつてダンテスと分け合ったように、その朝ダンテスも自分と金を分け合うと申し出てくれたことを皆に思い起こさせる。酔いが回るにつれて、カドルースはそれでもダンテスの健康を祝して乾杯し、友人への害意に対しては阻止するとまで脅す。理性が薄れていく中でも、彼の本能は計画された裏切りの「恥ずべき不名誉」を見抜き、罪状を示す手紙に手を伸ばす。しかしダングラールがそれをさっと奪い取ってしまう。
ダンテをボナパルト派のスパイとして偽って告発する計画
ダンガラスは、ボナパルティズム(ナポレオン支持)の容疑でダンテスを無実の罪で逮捕させようとする周到な策略を企てる。ダンテスがこの度の航海でエルバ島に立ち寄ったことに目をつけ、検事に対し彼をムラトの使者として密告できるのだと説明する。この告発であれば、実際に殺人を犯す必要もなく、投獄に処すに足るほど重大なものである。ダンガラスは、この計画ならば「決して自分自身にはね返ってこない」復讐が可能だと力説し、共謀者たちは直接の責任を免れることができると強調する。その手口とは、ダンテスがムラトからパリ在のボナパルト派委員会への手紙を運んでいたと訴えるものであり、そうなるとその手紙は、彼の身上か、父親の家か、あるいはファラオン号の彼の船室のいずれかに必ず見つかるだろうという筋書きである。
ダングラールが変装した告発文を書く
密告が共謀者たちにまで辿れないようにするため、ダングラールは、普段の筆跡とはまったく異なるように、左手で左右反転させた書体で手紙を書くことを提案する。彼は密告状を実際に起草してみせることでその技法を実演し、それをフェルナンに渡して黙読させる。手紙は、エドモン・ダンテスが「ミュラから簒奪者への手紙を依頼され、さらにその簒奪者からパリにいるボナパルト派の委員会への手紙を依頼されている」と、虚偽の罪で告発する内容となっている。ダングラールはさらに、手紙を畳んで王の検察官あてに宛てれば計画は完成だと提案する。そしてカドルースの杯にさらにワインを注ぎ、仕立て屋に残っていたわずかな判断力もうまく曇らせて、これ以上の邪魔をさせないようにする。
フェルナンが告発文を提出しに出立する
ダングラールが冗談のようにその手紙を捨てたつもりで、あずまやの隅に投げ出すと、カデリュースは意識を失って倒れる。それからダングラールは、その酔った男を連れてマルセイユへと出発し、表向きはフェルナンドをそこに残して去る。しかし、二人が歩いていく途中、ダングラールはふと振り返り、フェルナンドがその隅から皺だらけの手紙を拾い上げてポケットにしまい、自分が行くと偽っていたカタラン地区とは反対の、市内へと続くピヨンの方へ駆け出すのを目撃する。ダングラールは、この計略は「すでに動き始めており、立案者の手助けなしでも目的を達成するだろう」と確信し、陰謀が仕掛人のさらなる介入なしに進行することを確認する。
第5章 結婚の宴
第5章 婚礼の宴 『モンテ・クリスト伯』第一部:フェラギュスト マルセイユの港の上に朝の太陽が澄み切った輝きで昇ることから物語は始まる。婚礼の宴はラ・レゼルヴの二階に設けられ、窓の上には金文字で都市名が記され、招かれた客人たちは予定の時刻より一時間も早くから木製のバルコニーに集まっていた。祝宴はファラオン号の乗組員たちに愛され、船舶所有者モーレル氏の臨席に華やぐ、エドモン・ダンテスとメルセデスの婚礼を祝うものである。しかし、その祝いは法の名のもとにエドモンが逮捕されることで悲劇的に中断され、花嫁も、老いた父も、友たちも、深い衝撃と悲嘆のうちに置き去りにされる。モーレル氏がエドモンがボナパルト派の工作員として正式に起訴されたという重大な報せを持ち帰った後、メルセデスは絶望のあまり崩れ落ち、エドモンの年老いた父は、身に覚えのない破壊的な告発に打ちのめされて椅子に沈んでしまう。この夜企てられた策略への加担に良心の呵責にさいなまれていたカドルースは、最初は真相を暴露すると息巻くが、ダンガラスが事の真相で真に責を負うべきはフェルナン一人であると言い含め、両者の利害には沈黙こそかなうと説き伏せる。エドモンの窮状に同情したモーレル氏は、代理検事ド・ヴィルフォールに仲裁を請じることを引き受け、その間の処置としてダンガラスにファラオン号の臨時指揮を委ねるが、積荷係のもくろみなど露知らぬことである。一方、ダンガラスとカドルースは、エドモンの運命を定めたあの具合の悪い書状を、フェルナンが持ち出して転送したに相違ないことをひそかに悟りながら、その知識を胸に秘めておくことを固く誓い合う。終盤のやり取りで、ダンガラスは己の策謀によって船長の座が手中に入ったことを内心で快哉の如く喜び、エドモンが牢獄にしっかり繋がれている今、司法が「自ずから然るべき道を行く」だろうとの満足を胸に、ファラオン号へと意気揚々と船出するのである。
第五章 結婚の宴
第5章 婚礼の宴——『巌窟王』第一部「フェラグスト」 朝日は、マルセイユの港の上に清らかに、そして燦然と昇った。婚礼の宴はラ・レゼルヴの二階に準備されていた。窓の上部には金文字で都市名が刻まれ、待ち望む客人たちが予定の時刻よりも一時間も早くから集まる木製のバルコニーが備えられていた。祝宴は、ファラオン号の船員たちに慕われ、船主モレル氏の御臨席を賜ったエドモン・ダンテスとメルセデスの結合を寿ぐものであった。しかし、その祝いは悲劇的に断ち切られる。法の名によりエドモンが逮捕されたのである。花嫁と父、そして友人たちは、深い衝撃と悲嘆のなかへ突き落とされた。
来客の準備と到着
客たちの準備と到着 ラ・レゼルヴでの祝宴には、ファラオン号の選り抜きの乗組員と花婿の親しい友人たちが集い、この慶事に敬意を表して一同が晴れの装いに身を整えていた。広く囁かれる噂では、モレル氏御自身が結婚の宴に出席されるとされており、エドモンが間もなく船長へと昇進することをうかがわせる前例のない栄誉である。ダングラールとカドルースが一緒になって到着し、モレルが出席すると知ると、ふたりは花婿を探しに出向き、急ぐよう促すよう遣わされる。しかし二人が遠くまで行く前に、結婚の一行が視界に入ってくる。エドモンとメルセデス、若き花嫁介添人たち、続いて立派な身なりの老ダンテス——水玉模様の絹地にイギリスの靴下、白と青のリボンで飾られた三角帽子を被り——、そして最後にフェルナン。不吉な微笑を浮かべ、青白く上の空の彼は、暗い企みをにおわせている。
花嫁一行がラ・レゼルヴに到着
婚礼の一行、ラ・レゼルヴに到着す モレル氏は降りてきて婚礼の一行を迎え、集まった兵士や水兵たちの温かい歓迎を受ける。エドモンは丁重にメルセデスの腕をモレルの腕に預け、客たちはきしむ木の階段を昇って祝宴の間へと続く。メルセデスは舅に右手の席を請い、左側のフェルナンには「私の兄として」と手招きする。しかし、この何気ない仕草がフェルナンにはこの上ない苦痛となる。彼の唇は死人のように青ざめるが、メルセデスとエドモンは彼の心痛にまったく気づかず、二人の幸福に酔いしれている。エドモンは宴の主座につき、右にモレル、左にダングラールが着席する。この宴は二人の婚約を祝うためのものではあるが、ダングラールとカドルースはフェルナンの苦悩の様子に気づき、カドルースは前夜の出来事を想起する——それこそがエドモンに対する恐ろしい陰謀の存在を示唆していた。
結婚の宴
結婚の宴 アルルのソーセージやロブスター、車海老、その他の海の珍味がゲストの間を順々に回っていく。老ダンテスは、幸福な集まりに不思議な静寂が漂っていることに触れる。カドルースが、人は結婚の直前だからといって常に幸福に感じられるわけではないと指摘すると、エドモンは自分が「騒がしい陽気さには余りにも幸せすぎる」と説明し、混じりけのない幸福を燃え盛る龍に守られた魔法の宮殿にたとえる。するとダングラールが、なぜフェルナンドがそれほど動揺しているのかと疑わしげに問う。エドモンは、モレルの尽力のおかげで、わずか一時間半後に市庁舎で実際に結婚の儀式が行われるという驚くべき知らせを明かす。四日後にパリから戻った後、二度目の祝宴が催されることも約束される。ゲストたちは驚嘆と歓喜に包まれるが、フェルナンドの蒼白さがダングラールにも移り、フェルナンド自身はサロンのはずれへ退き、カドルースは彼ら二人が企てていた「策略」についてフェルナンドに詰め寄る。
エドモン・ダンテスの逮捕
**エドモン・ダンテスの逮捕** メルセデスが二時が鳴ったことを告げ、市役所へ向かわなければならないと告げると、兵士たちが階段を上ってくる音が祝いの雰囲気を中断させた。公式のスカーフをまとった治安判事が、その後ろに従う四人の兵士と一人の伍長を連れて、法律の名において入室を求めた。説明を求められると、士官はエドモン・ダンテスに対する逮捕状を携帯していることを明かした。エドモンは威厳を保って前に進み、理由は予審で知らされるだろうと告げられた。老ダンテスは息子のために必死に嘆願し、士官が単なる書類の手続きの不備に過ぎないだろうと優しく宥めてくれて、ようやく落ち着きを取り戻した。群衆はダングラールに説明を求めるが、彼は完全な困惑を装い、一方、前夜の出来事を覚えているカドルースは彼が関与していると非難した。フェルナンはすでに姿を消していた。混乱の中にもかかわらず、エドモンは友人たちに単なる誤解に過ぎないときず、彼らの手を固く握って連行されていった。
その後と悲嘆
余波と悲嘆** エドモンは兵士と判事と共に馬車に乗せられ、マルセイユへと出発する。そのときメルセデスがバルコニーから「さようなら、さようなら、最愛のエドモン!」と泣き叫ぶ。囚人は馬車の窓から身を乗り出して、「さようなら、メルセデス——すぐにまた会いましょう!」と呼び返し、サン・ニコラ砦の角を曲がって姿を消す。モレル氏はすぐ後を追って町から便りを届けると約束する。取り残された者たちは恐怖の沈黙に落ちるが、やがて年老いたダンテスとメルセデスは、別々に悲しみに沈んだ後、互いに腕の中へと飛び込む。フェルナンが再び姿を現し、震える手で水を注ぎ、メルセデスの隣に座るが、無意識に身を引く。カドルースはダングラールに、この「不幸」はフェルナンの仕業だと確信していることを囁く。年老いたダンテスが「まだ望みはある」という言葉でメルセデスを慰めようとすると、ダングラールとフェルナンは揃ってその言葉を弱々しく繰り返す。だがフェルナンの青ざめた唇の上では、その言葉は掻き消え、痙攣のような引きつりが彼の表情を歪める。
第5章 結婚の宴
モルレ氏が戻ってきて、エドモンがボナパルトの工作員として正式に起訴されたという悲報を告げると、メルセデスは絶望のあまり崩れ落ち、エドモンの年老いた父親はその身に覚えのない告発に打ちのめされて椅子に沈んでしまう。夜の策謀における自分の役割に罪の意識にさいなまれていたカドルースは、初めは真相を暴露すると息巻くが、ダングラールが沈黙が双方の利益にかなうとして彼をなだめ、フェルナンだけが真の責任を負っているのだと説き伏せる。エドモンの窮状に同情したモルレ氏は、代理検事ド・ヴィルフォールに取り成すことを引き受け、その間ダングラールにファラオン号の一時的な指揮を任せるが、その船員が企んでいることには気づいていない。一方、ダングラールとカドルースは私的に、エドモンの運命を決定づけたあの致命的な手紙はおそらくフェルナンが持ち出し、転送したのだろうと認めるが、二人ともその知識を隠し通すことを誓い合う。最終的な場面では、ダングラールが自分の策謀によって船長職を手に入れたことを内心で小気味よく思い、エドモンが安全に投獄されれば正義は「自ずと」なされるだろうと満足しながら、意気揚々とファラオン号へと旅立っていく。
ダンテス逮捕の悲報
モレル氏が戻ってくると、群衆は吉報を期待して集まる。しかし、届けられたのは身を打ち砕くような知らせだった――エドモン・ダンテースがボナパルト派の回し者のかどで逮捕されたというのである。メルセデスとダンテースの老父は、この知らせを断腸の思いで聞く。ナポレオンとのいかなる繋がりも命取りとなりかねぬ当時の政治情勢の下で、この嫌疑はことのほか重大な意味を持っていた。メルセデスは絶望のあまり崩れ落ち、エドモンの父は椅子に力なく座り込み、悲嘆に押し潰されんばかりになる。
ダングラールが沈黙を守るようカドリュスを威嚇する
カデリュスは最初、陰謀を暴露すると脅し、無辜の民が苦しむなど許すわけにはいかないと主張する。ダングラールは彼の腕を掴み、背筋の凍るような警告を突きつける。すなわち、彼らの知るところを明かせば、自分たちまで共犯者として嫌疑をかけられることになるというのだ。ダングラールは巧みにエルバ島で足止めを食らった一件を引き合いに出し、それを口実にする。カデリュスの本性である利己心が次第に優勢となり、ついに彼は沈黙を保ち、事の推移を見守ることに同意する。こうして二人はその場を立ち去り、メルセデスをフェルナンドに任せ、エドモンの父をほとんど息絶え絶えの状態で残していく。
モレルがダングラールとカドリュスに出会う
逮捕の一報を受けて戻ってきたモレル氏は、港でダングラールとカデリュスと顔を合わせる。ダングラールは表向きの偽りの態度を崩さず、エルバ島への寄港を以前から怪しく思っていたが、心中の懸念は口にしなかったのだと主張する。そのうえ狡猾にも、叔父のポリカール・モレルの存在を引き合いに出して、モレル氏自身がボナパルト派に共感を持っているのだとほのめかす。ダンテスが自分をどう見ていたかと尋ねられたモレルは、ダンテスがダングラールをファラオン号に引き続き雇い続けるつもりだったと打ち明ける。これを聞いたダングラールは、「この偽善者め」と押し殺した声で呟いた。
ダングラールがファラオン号の指揮を執る
ダンテスが投獄されたため、ファラオン号は船長不在の状態となる。ダングラールは直ちにこの機会をつかみ、ダンテスの釈放までの間、臨時に船長の指揮を執ることを申し出る。モーレルはダングラールに船舶の管理と貨物の監督を行う全権を与える。ダングラールはこれを受け入れるが、内心では、状況がこのまま好都合に続けば、この配置が恒久的なものとなるのではないかと計算していた。
ダングラールがフェルナンへ罪を転嫁する
モレルが司法宮殿へと出発した後、ダングラールはカドリュスに、偽の手紙をフェルナンドのせいにする自身の策略を明かす。彼は、告発の手紙が誰かによって書き写されたことを知りながら、それが単なる冗談だったという虚偽の話を押し通す。ダングラールはカドリュスに、すべての結果は有罪の者──フェルナンド──に及ぶべきだと安心させ、二人には沈黙を保つよう促す。内心、ダングラールは密かに自らを称える。カドリュスが口をつぐんでさえいれば、ファラオン号の指揮権を一時的とはいえ確保できただけでなく、永続的な支配もほぼ間違いないと見込んでいるからだ。彼にとっての最後の慰めは、ダンテスが今や司法の手中にあり、「司法は自ら然るべき裁きを下すだろう」という確信である。
第6章 王室代理検事
マルセイユのサン=メラン家の邸宅で、王党派の婚礼の宴が催されている。ヴィルフォールがルネーと婚約したのだ。ナポレオン治世中に国外へ逃れていた貴族たちの賓客たちは、今や復活した王政を祝して集い、それぞれの政治的信条を語り合う。そのかたわらで、ナポレオンや平等、フランスの行く末の政治情勢をめぐり、熱のこもった議論が繰り広げられる。ヴィルフォールは父のジロンド派としての過去から距離を取り、王への忠誠を声を大にして宣言する。ボナパルト派の陰謀に関する報せを受けたヴィルフォールがエドモン・ダンテス逮捕のために出立する場面で、この章は頂点に達する。
王党派の結婚の宴
エドモン・ダンテスの質素な婚礼の宴とは対照的に、サン・メラン侯爵の邸では豪華な饗宴が催されている。賓客には王党派の高官、ナポレオン軍からの脱走兵、そしてナポレオンを憎悪する貴族たちが名を連ねていた。話題はナポレオンの皇帝からエルバ島の統治者への転落――配下わずか五、六千という末路――へと及ぶ。一同はルイ十八世王の御ために乾杯を捧げ、サン・メラン侯爵夫人はナポレオンを支持して甘い汁を吸った輩たちよりも、自らの王政への忠義がいかに深いかを力説した。
ナポレオンと平等に関する政治論争
ヴィルフォールとサン=メラン侯爵夫人の間で、ナポレオンと平等に関する激しい哲学的論争が巻き起こる。ヴィルフォールは、ナポレオンは「西洋のムハンマド」のような存在であり、人民を玉座へと押し上げる平等の象徴であると主張する。それに対して、ロベスピエールの平等は王をギロチン送りにして堕落させるものだと反論する。彼は両者とも革命の悪党であったと断じるが、彼らの没落はフランスにとって幸運であったと付け加える。侯爵夫人は彼に、かつてジロンド派に属した彼の父親の政治的転身を思い起こさせる。
ヴィルフォールが父の過去を非難する
侯爵夫人がヴィルフォール(ヴィルフォール)の父親であるノワルティエについて触れる場面がある。ノワルティエはジロンド党員であり、のちには上院議員でもあった。これに対してヴィルフォールは、父の政治的信条を捨て去ったと答える。彼は説明する。かつて市民ノワルティエはジロンド党員であったが、伯爵ノワルティエは上院議員となり、自分自身はド・ヴィルフォールとして熱心な王党派である、と。彼はみずからを古い革命の「幹」から切り離し、現在の王党派的信念のみによって評価されたいと望んでいる。国王陛下自らも、このジロンド党員の息子と王党派令嬢との縁組を承認してくださった、という。
代理検事長の野心
ヴィルフォールは王党派検事としての野心とプライドを見せびらかしている。彼は何件かの見事な起訴を成功させ、政治的陰謀者たちに対して死刑判決を記録してきたと豪語する。レネéeが処刑の話に恐怖を示すと、ヴィルフォールは自分の職業には「非情であること」が必要だと主張し、被疑者が「蒼白になり、動揺し、完全に打ちのめされたようになる」ことに誇りを感じていると語る。さらに彼は陰謀者たちへの過酷な扱いを正当化するため、彼らを国王に対する親殺し、すなわち「三千万の民の父」に対する親殺しにたとえる。侯爵夫人は彼にマルセイユからボナパルト派を一掃するよう促す。
匿名の告発
使用者が宴会の最中に駆け込んできて、ヴィルフォーに切迫した声で耳打ちする。戻ると、ボナパルト派の陰謀が発覚したことを告げる。彼は匿名の書簡を読み上げる。それは国王代理検事に宛てたもので、ファラオン号の二等航海士エドモン・ダンテスが、ムラトとナポレオンの間、そしてナポレオンとパリにあるボナパルト派クラブとの間で書簡を運んでいたことを知らせている。書簡は、その手紙がダンテスの手元か、彼の実家か、あるいはファラオン号の彼の船室のいずれかで見つかるだろうと示唆している。書簡には署名がなく、宛名もヴィルフォーではなく国王代理検事宛となっているが、被告人はすでに身柄を拘束されている。
エドモン・ダンテスの逮捕
ルネーが婚約のこの日に慈悲を請い願うと、ヴィルフォールは彼女のために温情ある処置を約束するが、もし罪状が事実と判明したならばダンテスの処刑を命じると釘を刺す。侯爵夫人はルネーの感傷的な態度を退け、ヴィルフォールは使命の陰惨さにもかかわらず「心に天国を抱いて」屋敷を後にする。やがて、ダンテスがヴィルフォールの屋敷に身柄を拘束されていることが明かされ、都合の悪い手紙が発見されない限り、死刑執行人の手を通さなければ彼を釈放することはできないと言われる。これにより、ダンテスの投獄と、彼の十四年にわたる艱難辛苦の始まりへの序幕が切って落とされるのである。
第7章 取り調べ
第7章は、マルセイユの司法宮殿におけるエドモン・ダンテスの極めて重要な取り調べを描いている。この章では、ダンテスが携えている手紙がノワルティエ——ヴィルフォール自身のボナパルト支持者の父親——に宛てられているという危険な偶然によって、ヴィルフォールが救済者となり得た存在から意図的な裏切り者へと変貌する過程が綴られる。取り調べを通じて、デュマは劇的なアイロニーを巧みに構築する。手紙の内容も宛名人も知らないダンテスが、まさに己を破滅へと追い込むことになる男に信頼を寄せてしまうのだ。この章は、誤った投獄という小説の中心的仕組みを確立すると同時に、やがてダンテスの正義を求める旅を動かす巨大な陰謀を予示している。
ヴィルフォールの野心と逮捕
ヴィルフォールの野心と逮捕 ヴィルフォールは将来の義父サン・メラン侯爵のサロン(客間)を、裁判官らしい厳粛な面持ちで後にする。鏡の前で入念に作り込んだ気高い顔立ちにもかかわらず、司法官としての威厳を保つのは難しい。彼の幸福はほぼ完璧な状態にあった。二十七歳にしてすでに裕福であり、検事代理という高い官職に就いている。さらに、魅力的なサン・メラン嬢と婚約しており、その家柄は相当な政治的影響力を持っていた。持参金は五万クロンヌにも上り、彼女の父が亡くなった暁にはさらに五十万クロンヌの追加が見込まれていた。司法宮に隣接する自邸の扉の前で、ヴィルフォールは警察署長と出くわす。署長は、捕らえられた者がモレル社所有のファラオン号の二等航海士エドモン・ダンテスであることを彼に告げる。ダンテスはまだ十九歳か二十歳にしかならず、海軍での勤務経験は一度もない。ダンテスから発見された書類はすべて封印され、ヴィルフォーの机の上に届けられたが、この時点ではまだ何らかの陰謀の存在を示すものは何も知られていなかった。
モレルがダンテスのために取りなす
モレルがダンテスのために嘆願する ヴィルフォーが司法宮殿へと向かって歩いていると、船舶所有者モレルが悲痛な面持ちで彼に近づき、自分の部下であるエドモン・ダンテスの逮捕は取り返しのつかない間違いだと嘆願する。モレルはダンテスを、この世で最も立派で信頼できる人物だと称賛し、商船界にこれほど優れた船員は存在しないと断言する。一方、貴族出の王党派であるヴィルフォーは軽蔑を込めてモレルを見やり、その船舶所有者の出自が卑賤であること、そしてボナパルト党への共鳴が疑われていることに目を向ける。彼は冷淡な調子で、人は私生活においては信頼に足る人物であっても、政治的には罪人となり得ると釘を刺す。モレルが嘆願の中で「我々に返してください」という集合的な言い回しを用いた時、ヴィルフォーはその物言いを革命的な言辞と受け取る。裁判官は不吉な調子で、ダンテスがカルボナリ協会の一員である可能性をほのめかし、数多くの者と共に居酒屋の一室で逮捕された事実を指摘する。ヴィルフォーはモレルに対し、職責を公正に果たすことを確約する。無実は報いられるべきだが、今の時代において有罪は罰せられねばならず、危険な前例が放置されることは許されないのだと。彼はそう言い残して冷淡に立ち去り、モレルをその場に石像のように立ち尽くさせたままにする。
ヴィルフォーが被疑者に対面する
# ヴィルフォール、被告人と会う モレルが立ち去った後、ヴィルフォールは自邸に入り、警官と憲兵で満たされた前室を通り抜ける。その中央に囚われたダンテスが立っている。厳重に監視されてはいるが、落ち着いて微笑みを浮かべている。ヴィルフォールは彼を横目で素早く見やり、一束の書類を手に取り、取調べを行うために奥へと姿を消す。 その一瞬の視線の中にも、ヴィルフォールはダンテスの高い額に知性を、闇色の瞳と寄った眉に勇気を、真珠のように白い歯をのぞかせる厚い唇に率直さを認める。彼の第一印象は好意的だが、ヴィルフォールは直感的な感情を信じてはならないと自戒する。 ダンテスは蒼白ながらも落ち着いた様子でヴィルフォールの執務室に入り、裁判官に慣れた様子で礼儀正しく挨拶し、モレルのサロンにいるかのようにあたりを見回して腰を下ろそうとする。 主任判事はまずダンテスの身元を尋ねる。若者は穏やかに、自分はエドモン・ダンテス、『ファラオン』号の二等航海士で、モレル商会のものであると答える。年齢を問われると、十九歳だと答える。取調べは、彼の経歴と逮捕の経緯についての質問から始まる。
尋問と匿名の手紙
尋問と匿名の手紙 逮捕されたときに何をしていたかと問われると、ダンテスは自分の結婚式の祝宴の最中だったと明かす。その幸福な瞬間と今の試練との対比に、彼の声が震える。この偶然の一致にヴィルフォールはひどく心を動かされる。というのも、彼もまたまさに結婚しようとしている最中だったからだ。この共感の響きが、ヴィルフォールの態度をほんの束の間、柔らかなものにする。続いてヴィルフォールはダンテスの政治的思想について尋ね、「簒奪者」のもとで服役していたかどうかと問う。ダンテスは、ナポレオンが没落したときには王立海軍兵への編入をまさに目前に控えており、十九歳の自分には政治的な思想はなく、ただ三つの感情――父への愛、モレルへの尊敬、メルセデスへの崇拝――しか持ち合わせていないと説明する。ダンテスに敵がいるかと問われた青年は、自分の地位は敵を持つほど高いものではないと認めるが、性格は短気かもしれないと付け加える。また、自分の下にいる十人か十二人の船乗りたちは、彼を兄のように愛し敬っていると述べる。次にヴィルフォールは匿名の告発の手紙を取り出し、その筆跡に見覚えがあるかと尋ねる。ダンテスはそれを読み、額に一抹の翳りが過ぎるのを感じ取るが、筆跡はそれなりに整っているものの見覚えはないと断言する。そして、自分をこのように公正な裁判官に審理してもらえることに感謝を表明するが、まさにこの同じ手紙が自分の運命を閉ざすことになるとは、彼には知る由もなかった。
ダンテスがエルバ島への使命を説明する
ダンテス、エルバへの使命を説明す ヴィルフォールの要請により、ダンテスは最近の航海の完全な真実を物語る。ナポリを発った後、ルクレール艦長は脳熱に襲われた。悪化の一途をたどる体調にもかかわらずエルバへの到達を固く決意した艦長は、息を引き取る前にダンテスを呼び寄せ、使命を必ずやり遂げるとの厳粛な誓いを引き出した。ルクレールは、ポルト・フェッライヨの大元帥に謁見するための書状と指輪をダンテスに託した。ダンテスはエルバへ向け出帆し、指輪を届けて大元帥との謁見を果たし、パリへ届ける別の書状を受け取った。彼は任務を完遂し、マルセイユに上陸して船の諸務を整え、間もなく行われる結婚を祝おうとしていた矢先に逮捕された。ダンテスは、船乗りとしての名誉、メルセデスへの愛、そして父の命にかけて、書状の内容を一切知らなかったと誓う。ヴィルフォールはこの告白に心を動かされたように見え、上官の命令に従った際の軽率さ以外にダンテスの罪はあり得ないと示唆する。彼はダンテスに対し、書状を差し出し、必要とあらば出頭することを約束した上で、友人たちの元へ戻ることを提案する。自由の展望に大喜びしたダンテスは立ち去ろうとしたその時、ヴィルフォールが書状を求めた。ダンテスは、それが他の書類と共に既に自身から取り上げられていたことを打ち明ける。
衝撃の宛名
衝撃的な宛名 ヴィルフォールはダンテに、その手紙が誰宛てなのかと尋ねる。ダンテが「パリ、コック・エロン通り、ヌワルティエ様」と答えると、その効果は惨憺たるものだった。雷の一撃をもってしても、これほどまでにヴィルフォールを茫然自失させることはできなかっただろう。彼は椅子に崩れ落ち、顔から血の気を失い、最悪の恐怖を確認するかのようにその宛名を口の中で繰り返す。蒼白となり、憔悴したヴィルフォールを見たダンテは、彼がそのヌワルティエを知っているのかと問う。ヴィルフォールは気を取り直し、「王への忠実な臣下に陰謀者を知る者などいない」と言い放つ。その皮肉は痛烈無比である——ヌワルティエとは、ヴィルフォール自身のボナパルト支持者の父親であり、ヴィルフォールをそうした書簡と結びつける手紙は、王党派判事としての彼の経歴を根底から覆すことになるのだ。ヴィルフォールはダンテに食い下がり、執拗に問いかける。誰かにその手紙を見せたのか。エルバからヌワルティエ氏宛ての手紙を運んだことを、誰か知っているのか。ダンテは、それを託した者以外に誰も知らないと固く誓う。「しかも、それが多すぎたのだ、あまりに多すぎた」とヴィルフォールは呟く。ダンテが答えを懇願する中、もし検事自身がこの場にいたら、自分は終わりだとヴィルフォールは密かに悟る——父の過去が、息子の成功の行く手を阻むのだから。
ヴィルフォールが手紙を破棄し、ダンテスを裏切る
ヴィルフォールが書状を焼き捨て、ダンテスを裏切る その致命的な書状を幾度も読み返した末に、ヴィルフォールは恐ろしい決断を下す。彼はダンテスに対し、すぐに自由の身にしてやることはできず、予審判事に相談しなければならないと告げる。ダンテスの感謝の気持が高まる中、ヴィルフォールは今度は何とも思いやり深げな素振りを見せる――書状を差し出し、ダンテスに対する主な嫌疑はこの書状そのものであると説明する。ヴィルフォールは暖炉に近づき、書状を炎の中へ投げ入れ、完全に燃え尽きるまでじっと見届ける。「ご覧の通り、私はこれを焼き捨てた」ダンテスは感激に圧倒されながら、ヴィルフォールは「善そのものだ」と叫ぶ。しかしこの見せかけの慈悲は、まさしく裏切りであった。ヴィルフォールはダンテスに、夕暮れまで拘置しておかねばならず、もし他の者から尋問されるようなことがあれば、書状について一切知らないと否認するようにと戒める。「大胆に否認しなさい、そうすればあなたは救われる」とヴィルフォールは言い渡す。ダンテスは否約すると誓う。番兵が入ってくると、ダンテスは連行されていった。独り残されたヴィルフォールは、椅子に半ば失神したように崩れ落ちながら、破滅と父の過去の経歴についてつぶやく。やがて彼の顔に一筋の光が走る――口の端に笑みが浮かぶ。「これでよい。私を破滅させかねなかったこの書状から、私は運を開くことができる」彼は、無実の男を投獄に追いやりながら裏切りによって己を救ったまま、婚約者の許へと急ぐのであった。
第8章 シャトー・ディフ
「この章は、エドモン・ダンテスの不当な投獄の旅路を年代順に記しています。まずは司法宮から独房への移送に始まり、続いて夜陰に乗じた馬車の護衛のもとマルセイユの波止場へ向かい、そこから悪名高いイフ城の要塞へと船で渡る旅を経て、ついに彼は投獄されます。約束されていた自由を裏切られ、奪い取られたと悟ったダンテスは、深い絶望の闇へと精神的にも落ち込んでいくのです。」。
初期の投獄と夜間の護送
ダンテスは逮捕された後、最初に法廷から陰気な独房へ移送され、ヴィルフォールが以前確約した言葉に基づいて解放される望みにつなぎ止めながら、暗闇の中で何時間も閉じ込められて過ごした。その夜遅く、憲兵たちが戻ってきて、彼を独房から連れ出し、移送のために鍵のかかった馬車に乗せた。
裁判所から独房への移送
パレ・ド・ジュスティスでの手続きを済ませた後、ダンテスは憲兵に両側を固められながら、長く薄暗い廊下を歩かされ、アクール塔を見下ろす陰鬱な刑務所の建物へと連行された。憲兵が鉄槌で鉄の小扉を三回叩くと、扉が開いてダンテスを中に入れたかと思うと、背後で激しく閉ざされ、刑務所の悪臭ただよう濁った空気の中に彼を閉じ込めた。整頓こそされているものの格子窓のついた独房に収容された彼は、それでもなお自分がすぐに釈放されるものと確信していた。
真夜中の馬車護送
希望と絶望を交互に繰り返しながら、何時間も牢獄で待ち続けた後、午後十時に憲兵たちがたいまつを携えて現れ、ダンテスを連れ出しにやって来た。ダンテスは二名の憲兵を伴って護送馬車に乗り込み、馬車はマルセイユの市街を抜け、岸壁へと向かった。ケッスリー通り、サン=ローラン通り、タラミス通りを通り過ぎ、水辺のラ・コンシーニュ詰め所にてようやく停車した。
シャトー・ディフへの小舟の旅
ダンテスは馬車から移され、四人の漕ぎ手と一人の警官、護送官(ジェンダルム)たちに付き添われて、小舟に乗り込んだ。舟は港を出て、メルセデスがかつて住んでいたカタラン岬の近くを通り過ぎる。ダンテスは一瞬、彼女に向かって叫びたい衝動に駆られるが、プライドがそれを押しとどめる。護送官から目的地がイフ城であることを知らされ、彼は海に飛び込んで逃げようとするが失敗し、銃を突きつけられて制圧された後、やがて牢獄への旅を続けざるを得なくなる。
港を横切って
船は十数人の兵士に守られながら岸壁を出発し、鎖を下ろして港から出る。テット・ド・モールとアンス・デュ・ファロの横を通り過ぎ、ラトヌー島の灯台を後にしながら内港を離れ、外海へと向かって進んでいく。
メルセデスの住処の前を通過して
船が海岸沿いに進んでいくと、ダンテスはカタラン岬の浜辺に一つの灯火がともっているのを見つける。それは婚約者メルセデスの家で、この辺りで起きている唯一の人物だった。彼は彼女に声をかけてみようかと思うが、護衛たちに分別を失ったと思われたくないという誇りから、その衝動を押しとどめる。船がさらに沖へ進むにつれ、まもなく土地の高まりが彼の視界から灯火を遮った。
目的地の露見
不安を抑えきれなくなったダンテスは、衛兵に目的地を尋ねた。衛兵が前を見るようにと示すと、そこには100ヤード先に、イフ城の不吉な黒い岩がそそり立っていた。政治犯だけを収容することで知られるその城塞に自分が連行されていることに衝撃を受けた彼は、取り調べを受けることもなく、なぜ投獄されるのかを問い質すが、すべての手続きはすでに完了していると告げられるのみであった。
失敗に終わった逃走の試み
ヴィルフォールの約束にもかかわらず不当に投獄されていると確信したダンテスは、突然海中へ身を投げだし、岸まで泳ぎ着こうとする。だが船外へ出る前に四人の憲兵に取り押さえられ、うちの一人はこれ以上抵抗するなら射ち殺すと脅す。今この場で逃れることは不可能だと悟ったダンテスは、もはや抵抗するのをやめ、激しい怒りに燃えながらも為す術もなかった。
シャトー・ディフへの到着
船がシャトー・ディフに着岸し、ダンテスは武装した護衛兵に付き添われて石段を上り、要塞の門へと向かう。門は彼の背後で静かに閉ざされる。彼は銃剣を構えた兵士たちの列の間を、要塞の中庭を通って連行され、一夜を過ごすための独房へと案内する下級の看守に引き渡された。
投獄と絶望への沈淪
シャトー・ディフに到着した後、ダンテスはじめじめとした地下の牢獄に一晩閉じ込められ、翌日は激しい精神的苦痛の中で一日を過ごす。旅の間に訪れた幾多の逃亡の機会を逃したことへの後悔、自分を陥れた裏切りへの悲嘆、そして父とメルセデスの先の知れぬ運命への苦悩が、彼を激しくさいなんだ。
最初の朝と所長への面会要求
翌朝、看守が戻ってくると、ダンゼスはまだ立ったまま涙を流していた。一晩中一睡もしていないのである。ダンゼスは何度も所長に面会させてほしいと頼み込むが、看守はそれを拒否し、刑務所の規則に反すると告げる。看守は、ダンゼスが言うことを聞くなら、食べ物をもっと良いものにする、本を読む許可を与える、散歩を許可するなど、いくつかの優遇措置を用意すると提案するが、ダンゼスは所長に会いたいだけだと言い張る。
逃した機会への苦悩
ダンテスは獄中での最初の一日を後悔の念に苛まれながら過ごす。泳ぎにかけては右に出る者もないというほどの自負があったのだから、船旅の途中でも何度でも海に飛び込んで脱出できたはずだとの思いが頭から離れない。スペインやイタリアへ逃げ延び、メルセデスや父親とともに自由に暮らすこともできたはずなのに、ヴィルフォールの偽りの約束を信じてしまったばかりに、今は難攻不落の要塞の中に閉じ込められ、愛する者たちの安否すら知ることができないでいる。
脅しと地下牢への移送
ダンテが所長との面会を求める願いを再び口にすると、看守は食事の差し入れを完全に打ち切ると脅し、かつて自由を懇願して発狂した先の囚人がいたことをダンテに告げる。これに対しダンテは、カタランにいるメルセデスにせめて伝言を一つでも届けてもらえないなら、腰掛けで看守を殺害すると脅迫する。恐怖した看守はその脅しを所長に報告し、看守が「縛り上げるほど正気を失っている」と言い放つ中、所長はダンテを下の階の地牢に移すよう命じる。
第9章 婚約の夕べ
この章は、ジェラール・ド・ヴィルフォールがレネ・ド・サン=メランとの婚約の夕べに始まり、父のボナパルト主義に関する秘密を守るために無実の男エドモン・ダンテスを投獄へと追い込んだ直後の場面から始まる。ヴィルフォールが王党派からの政治的支援を取りつけるためにパリへ急いで出発準備を整える場面、ダンテスの悲嘆に暮れた婚約者メルセデスとの最初の対面、無実の人間を陥れたことへの彼の揺るぎない罪の意識が芽生えてくる場面、婚約者と将来の義父母への別れの挨拶、そしてダンテスの逮捕後に彼と繋がりのあったすべての登場人物たちが辿ることになる、それぞれの異なる運命が本稿では描かれている。
ヴィルフォール、資産の換金と王への謁見アクセスを確保
ヴィルフォールは、グラン・クール広場にあるサン=メラン侯爵の邸宅に戻る。その日は朝に彼が突然立ち去ったため、不安げな来客たちが彼の帰りを待ち続けていた。彼はレネーの父である侯爵との二人きりの面会を求める。そして、国家の急を要する用向きで、ただちにパリへ向かわなければならないことを打ち明ける。侯爵に対し、公債に投じているすべての投資を遅滞なく現金化して、全財産の喪失を免れるよう強く促し、もはや手遅れとなる可能性もあると警告する。さらに、侯爵の知己であるサルヴィユ氏からの、ルイ十八世への紹介状を入手する。これにより、公式な謁見の手続きに伴う遅延なしにテュイルリー宮殿への謁見を直接得ることができ、ボナパルト派の脅威について持ち帰る情報を、すべて自分の手柄として主張できるようにする。
ヴィルフォール、メルセデスを拒絶し初めて後悔を味わう
ヴィルフォールが出発しようと家の外に出ると、ダンテスの婚約者であるメルセデスに呼び止められる。彼女は人目を忍んで訪れ、行方不明の恋人の消息を尋ねていた。ヴィルフォールはダンテスから以前聞いていた特徴から彼女をすぐに見分け、冷酷にもダンテスは危険な犯罪者であり、自分には何も助力できることがないのだと告げ、彼女を押し退けるようにして家の中に入る。中で待ち受けていたのは、自らの所業の重みだった。ヴィルフォールは生まれて初めての後悔の念に打ちひしがれ、自身の政治的な出世のために無実の男を犠牲にしたことを悟る。青ざみ、威嚇するかのようなダンテスの幻影に苦しめられ、ゆっくりと身を蝕んでいく罪悪感が刻一刻とより痛ましくなっていく——それは、法廷で有罪を宣告した罪人たちを罰した際に感じた激しく短い後悔とは似ても似つかないものだった。婚約者のルネがダンテスに対して何ら同情を示さず、出立によって挙式前夜に二人が引き裂かれることを嘆いているにすぎないという事実は、彼に何の救いももたらさない。
ヴィルフォール、別れを告げパリへ出発
漠然とした不安に襲われ、罪悪感を振り払うこともできないまま、ヴィルフォールは机の上の金貨をすべてポケットの中へ素早く詰め込んだ。使用人が外套を持ってきて、馬車の準備が整ったと告げると、彼は勢いよく椅子から立ち上がると飛び出し、御者たちにサン=メラン家へと馬車を走らせるよう命じた。到着すると、彼はルネーを抱きしめ、侯爵夫人の手に口づけし、侯爵の手を握り、エクス街道を伝ってパリへと出発した。婚約の祝いの席を後に残して。
メルセデス、老ダンテス、モーレル、カデリュス、ダングラールのその後
本章は、ダンテスの投獄後、彼と関わりを持つすべての登場人物たちのその後の運命を順に描き出して閉じられる。メルセデスは深い絶望のうちにカタラン地区に戻る。フェルナン・モンデゴは彼女の側に留まり続けるが、彼女は彼の慰めの言葉にまったく耳を傾けず、ダンテスを失った悲嘆に完全に沈み込んでいる。ダンテスの優しい雇い主であるモレル氏は、ダンテスの釈放を勝ち取ろうと、マルセイユにおける自分のあらゆる人脈を尽くし、影響力のある人物たちに次々と働きかける。しかし、ダンテスがボナパルト派のスパイであるという世間の固い信念は覆しようがなく、彼の努力はすべて徒労に終わる。モレル氏は絶望のうちに帰宅し、元雇い手のために、もうこれ以上できることは何もないと確信する。カドルースもまたダンテスの運命に対して同じだけの不安を感じながら、彼を救おうとはしない。かわりに二本のカシス・ブランデーを持ち込んで自室に閉じこもり、自責の念を酒で紛らわそうとするが、自分が一連の出来事の中で果たした役割をあまりにもはっきりと自覚しているため、酒の中に何らの安らぎも見出せない。これに対しダングラールはまったくもって満足し、心穏やかな状態にある。かれは『ファラオン号』における一等航海士の座という競合相手を除去し、自分自身の船での地位を確固たるものにしたのである。ダングラールにとってダンテスの投獄は、自らの利益における単なる数の上での得失に過ぎず、いつもの時刻に床に就いて、熟睡する。 Edmondの父である老ダンテスは、息子の失踪に対する心痛から死にひんしており、わが子に降りかかった運命については何一つ知らされていない。
第10章 テュイルリー宮の王の私室
この章は、テュイルリー宮殿の王の私室(ロイヤル・クローゼット)から幕を開ける。この部屋はアーチ型の窓で知られ、かつてはナポレオンの寵愛した居室であり、ルイ十八世の部屋でもあったが、今はルイ・フィリップの居室となっている。ルイ十八世王はハートウェルから持ち運んできたくるみの木製のテーブルに向かって座り、ホラティウスの詩集に注釈を施しながら、南フランスで高まる不穏の動きについて深い懸念を表明するブラカ公爵の言葉に耳を傾けている。王は持ち前の機知と古典への言及で応じ、注釈作業を続けながらラテン語の句を引用する。ブラカは、南部から信頼のおける情報提供者が到着し、王への重大な危険を警告していると主張するが、ルイ十八世は納得せず、臣下はただの警報を鳴らしすぎる人物だと示唆する。この場面は、ブラカの genuine な懸念と王の apparent な無頓着さの間の緊張を確立している。
テュイルリー宮の私室での場面:ブラカが不安を表明し、ダンドレが入室する
ブラカ氏は、南フランスで嵐が巻き起ころうとしているという緊急の警告を持って、国王のもとに参じた。ルイ十八世に、ラングドック、プロヴァンス、ドフィネなど各州に信頼に足る者たちを派遣し、現地における真情を確かめるよう懇願する。しかし国王は、例によって乾いた機知でかかる懸念を一笑に付し、あちらの方角は天候麗(うるわ)しき由(よし)、さして心配には及ばぬと言い放つ。ブラカはなおも食い下がり、南方を見張ることを命じられた堅実な人物が飛脚の馬で到着し、穏やかならざる報せをもたらしたのだと力説する。ちょうどその時、警視総監ダンドレ氏の来訪が触れられ、私室に入って来る。ルイ十八世は、ボナパルト氏のご動静を一報承りたいと機知に富んだ挨拶を交わし、「エルバ島は一座の活火山よ」と付け加える。
ダンドレ大臣とのボナパルトのエルバ島での状況に関する議論
ダンドレは、陛下のすべての臣下がエルバ島からの最新情報を歓迎するはずだと報告する。ボナパルトをひどく憔悴した様子で描写し、日中はポルト・ロンゴーネで鉱夫たちの作業を見物して過ごしているという。国王は、ボナパルトを苦しめている皮膚病「瘙痒症」について皮肉な所見を挟む。ダンドレはさらに、ボナパルトがまもなく発狂するだろうとほとんど確信していると付け加える。時には激しく泣き、時には高らかに笑い、何時間も浜辺で石を水面に弾ませて遊んでいるというのだ。ルイ十八世はこれに対し、これらはむしろ賢明さの証左かもしれぬと反論し、古代の偉大な将軍たち、たとえばスキピオ・アフリカヌスのような人物も、似たような形で自らを楽しませたものだと言及する。国王はさらに、いわゆるナポレオンの「改心」を明かす。つい最近の閲兵式で、フランスへの帰還を望む古参兵たちを「良き王に仕えよ」と説いて帰したのだという。ブラカスはこれらの安心材料に依然として疑いを抱き、大臣が欺されているか、さもなければ自分が欺されているかのいずれかだと譲らない。ただ、そのいずれであるかを決めることはできないでいる。
ブラカがマルセイユからの情報筋ヴィルフォールを引見する許可を得る
ブラカは王に、三日足らずで二百二十リーグもの道のりを旅してきた使いの者は、ホラティウスの詩に出てくる狼から逃げる牡鹿に匹敵する、と伝える。ブラカは、こうして困難に耐え、有益な情報をもたらした若い男を牡鹿にたとえる。ルイ十八世は、電報があれば三時間もあれば伝達が済むのに、この哀れな若い男に乏しい褒賞しか与えられぬのは心苦しいものだな、と冗談めかして言う。ブラカは、兄の侍従であるサルヴィユー氏がマルセイユからこの使者をお推めくださった、と述べる。「ヴィルフォール」という名を耳にした途端、ルイ十八世は急に不安の色を浮かべる。そして、ヴィルフォールとは、強い高い知性を持ち、野心旺盛で、その野望達成のためにはすべてを——たとえ自分の父までも——犠牲にする男だ、と知っている、と打ち明ける。王は、かの男がノワルティエ——ジロンド派の、あの議員のノワルティエ——の息子であることを確認する。とはいえ、こうした忌まわしい出自にもかかわらず、ルイ十八世はただちにヴィルフォールに謁見を賜ることを承知し、ブラカは彼を連れてくるために退出する。
宮廷に不相応な身なりにもかかわらず、ヴィルフォールが王に引見される
ブラカは急いで戻るが、前室で障害にぶつかる。ヴィルフォルの埃まみれの身なりと宮廷向きでない服装に、式部官のブレゼ氏は眉をひそめる。ブレゼ氏は、このように若い男がそんな恰好で国王の前にあえて参内しようとは、驚いてならない。公爵は「国王の命令」というただ一言でこれらの異論を退ける。式部官がみずからの職務の威信にかけて異議を唱えるのもむなしく、ヴィルフォルは通される。国王はブラカが立ち去った場所に座ったままで、扉が開くと、ヴィルフォルは君主と向かい合うことになる。立ち止まろうとする衝動を覚えるが、ルイ十八世は温かく迎え入れる。国王は、ブラカ公爵がヴィルフォルにはぜひとも伝えねばならぬ興味深い話があると言っていたと告げる。ヴィルフォルはそれを肯定し、自分が急いだことで事態がもはや取り返しのつかないものにはなっていないことを望むと述べる。国王は、ブラカの顔に浮かんでいる動揺が自分にも及び始め、ヴィルフォルの声にもそれが現れているのを感じながら、何事も順序立てて聞きたいので、すべてを話してほしい、最初から話してほしいと頼み込む。
ヴィルフォール、ボナパルト派陰謀の緊急報告を届ける
ヴィルフォールは報告書の読み始めにあたり、不安のあまり言葉の不明瞭をきたすようなら許しを請う、と先に述べた。それから自分が発見したのは、下層階級や軍部の卑俗な謀議ではなく、王の玉座を脅かす嵐、すなわち本格的な陰謀であることを告げる。簒奪者ボナパルトは三隻の船舶を武装させており、恐ろしい企てを思い巡らせている。すなわち、エルバ島を離れ行き先知れぬ地へ出航し、ナポリやトスカーナ沿岸、あるいはフランスの海岸へ上陸することを企図しているのだ。ルイ十八世は、サン=ジャック通りでボナパルト党のクラブが会合を開いているという最近の情報を持っていると明かす。ヴィルフォールは、これらの詳細を、監視していたマルセイユ人の男を尋問して知ったと説明する。その男とは、出発日に彼が逮捕した人物で、ボナパルト主義の嫌疑をかけられた腕っぷしの強い船乗りであり、密かにエルバ島に渡航していた。エルバ島で大元帥に謁見し、パリにいるボナパルト党員への口頭の伝言を受け取ったが、ヴィルフォールはその受取人の氏名を聞き出すことができなかった。その使命は、まもなく起こるナポレオンの帰還に備えて人心を整えおくことであった。王はその男の現在地を尋ね、ヴィルフォールは牢獄に拘留されていると答える。最後にヴィルフォールは、婚約の祝賀の席と花嫁のもとを後にしてまで、この緊急の情報をもたらしたと述べ、王への忠誠の証を立てたのであった。
ダンドレが苦悩しつつ乱入し、謁見を中断する
ルイ十八世はヴィルフォールに対し、ボナパルトがフランスに上陸しようものなら民衆に憎悪され、容易く始末できるだろうと請け合い、この若い判事の功績に対して王としての謝意を表すのだが、そのときブラカが突然、「ああ、ちょうどダンドレ殿のお出でだ!」と叫ぶ。戸口に姿を現した警察大臣は蒼白く、からだを震わせ、いまにも気を失わんばかりの有様である。この劇的な割り込みは、先ほど彼が述べていた安堵させる言葉よりも、よほど衝撃的な報せを持ち込んだことを窺わせている。ヴィルフォールは退出の身振りを始める——おそらく謁見をここで終えるべきと察したのだろう——だが、ブラカ伯はその手を取って引き留め、ダンドレがこれから伝えようとしているいかなる凶報にも立ち会わせようとする。
第11章 コルシカの鬼
第11章「コルシカの鬼」は、ナポレオン・ボナパルトがエルバ島から秘密裡に脱出し南フランスに上陸した直後の余波を描いている。ルイ18世のブルボン朝宮廷は、復活した王政に対する存亡の脅威に対処しようとし、野心的な検事ジェラール・ド・ヴィルフォールが思いがけない王室の寵愛を得る。そしてヴィルフォールは、パリを発ってマルセイユへ向かう直前に、疎遠になっていたボナパルト支持者の父との対面を余儀なくされる。
ナポレオンのフアン湾上陸の発表
テュイルリー宮殿において、警察大臣のバロン・ダンドレが慌ただしく駆けつけ、ルイ十八世陛下、ブラカ公爵、そしてジェラール・ド・ヴィルフォールに報せ入った。すなわち、ナポレオン・ボナパルトが去る二月二十六日にエルバ島を去り、三月一日にアンティーブ近くのジュアン湾という小さな港にフランスへ上陸したとの報であった。国王は怒りと絶望の入り交じった様子を見せ、臣下たちの取り返しのつかぬ失態と裏切りを激しく非難した。国王は、世間の嘲笑の的となってテュイルリー宮殿を追われるくらいなら、かのルイ十六世――わが兄上の処刑台に自ら立つのもまだましであると、声を震わせて言い放った。以前よりボナパルト派の謀略について国王に警鐘を鳴らしていたヴィルフォールは、ラングドック地方とプロヴァンス地方を糾合してナポレオンに対抗すべきだと進言するも、ドフィネ地方の山岳住民らは相変わらずボナパルトに心酔しているため、その動員には限界があると付け加えた。国王はブラカと警察大臣を早々に下がらせ、それから話は先頃起きたケネル将軍暗殺事件のことに移っていった。
ケネル将軍暗殺事件の調査とヴィルフォールへの王室の寵愛
王はケネル将軍の死の詳細について詰問し、警察大臣は、ケネルがボナパルト派のクラブを出た後に殺害されたため、これは自殺ではなく暗殺であったと確認した。ケネルを死へと誘引した男の人物描写——レジオン・ドヌールのロゼットを付けた青いボタン留めのフロックコートを着た、50歳から52歳の色黒の男——に合致する容疑者が追跡されたものの、リュ・ド・ラ・ジュシエンヌ通りで見失われた。エドモン・ダンテスに対する陰謀を隠蔽するためにケネルの殺害を企てたヴィルフォールは、この取り調べにひどく動揺するが、動機の露見を防ぐため、その恐怖を押し隠す。王はヴィルフォールの功績に報いて、レジオン・ドヌールのオフィシエ章を授与し、将来にわたる王室の恩寵を約束するとともに、マルセイユにおいて彼が大きな戦略的役割を果たすかもしれぬと示唆する。事実上経歴を台無しにされた警察大臣は、宮殿を退出するに際し、ヴィルフォールのこの突然の幸運を祝福した。
ヴィルフォールのホテルへの帰還と父親との再会
ヴィルフォールはトゥルノン通りにあるマドリッド旅館に赴き、二時間後にマルセイユに向けて出発できるよう馬車の準備を命じると、早餐の席についた。するとひとりの来訪者が面会を求めて現れた。従者の報告によれば、客は五十歳の色の黒い男で、ケルネル事件の容疑者の風貌と一致するということだった。男が入ってくると、それがヴィルフォールと疎遠になっているボナパルト派の父、ヌワルティエ氏であることが明らかになった。ヌワルティエはヴィルフォールをからかうように、控えの間で待たせたことを責め、子供時代の愛称「ジェラール」で彼に呼びかけた。ヴィルフォールは顔色を失い、動揺しながら、従者のジェルマンに二人きりにさせてくれるよう命じた。
第12章 父と子
『父と子』と題された本章は、エルバ島からのナポレオンの予想外の帰還と、フランスにおけるブルボン王朝の不安定な権力掌握という差し迫った状況を背景に、王党派の大法官代理ジェラール・ド・ヴィルフォールと、ボナパルト派に属する父ノワルティエの間で交わされる、緊迫した重大な会話に焦点を当てている。
ノワルティエの到着、部屋の安全確保、そして最初の挨拶
ノワルティエはヴィルフォールのパリ邸にやって来ると、まず前室と寝室の両方のドアを閉じ、鍵をしっかりとかけ、使用人や通行人に立ち聞きされないように細心の注意を払った。着いた時のヴィルフォールのあまり熱意のない出迎えをからかいながら、それからヴィルフォールの言葉に耳を傾ける。ヴィルフォールの説明によれば、彼がパリに戻ったのは、ちょうど今、王党派による警察がナポレオン派の扇動者たちを取り締まる捜査を活発に行っており、ノワルティエ自身もその対象に入っていることを、わざわざ父親に知らせにきたからだった。
サンジャック通りのクラブ、カネル将軍の死、そしてエルバからの手紙についての議論
ヴィルフォールがまず明かすのは、サンジャック街53番地にあるボナパルト党のクラブの存在を自分が知っているということであった。そこでは王党派のカネル将軍が偽りの口実で誘い出され、訪問の翌日にセーヌ川で遺体となって発見された——国王が公式に殺人と断定したこの事件について。続いてノワルティエは、カンヌへのナポレオンの上陸を知っていることを認め、ヴィルフォールは、それを運んでいた使いの者の手帳の中から、エルバからノワルティエ宛てに、計画された侵略の全容を書き記した手紙を発見したことを告白する。ヴィルフォールはその手紙を、王党派の手に渡って父が逮捕・処刑されるのを防ぐため、完全に焼き払ったのだった。
ナポレオンの帰還に関するノワルティエの洞察とヴィルフォールへの助言
ノワルティエはヴィルフォールの逮捕への恐れを一蹴し、恐怖政治の時代に革命による迫害を数十年にわたって逃れ続けてきた自身の経験を根拠として引き合いに出す。ケネル将軍をあの会合所へおびき寄せた男について警察が信頼できる人相を掴んでいるというヴィルフォーの主張を退け、ナポレオンのパリへの急速な進軍に関する精緻かつ正確な予測を披瀝する。そしてグルノーブルやリヨンのような王党派に忠誠を尽くす都市が皇帝の進軍を食い止めるだろうというヴィルフォーの誤った想定を正したうえで、ボナパルト派の情報網が王党派の警察よりはるかに有効であることを明かし、ヴィルフォーが秘密裏に予告なしで行ったパリ訪問を、市の境界線を越えてからわずか三十分も経たないうちに察知していたと告げる。
ノワルティエの変装と出発、そしてヴィルフォールのその後
ヴィルフォールが、ケルネルを誘い出した男について警察が持つ詳しい身体的特徴——黒い髪と浅黒い肌、青いフロックコート、レジオン・ドヌールのロゼット、広縁の帽子——を説明すると、ノワルティエはすぐにその場で見かけを変えて捕縛を逃れる。彼は黒いほおひげを剃り、青いフロックコートと黒い襟巻をヴィルフォールの茶色いコートと色付きのネッカチーフに替え、自分の杖をヴィルフォールの細縁帽子のひとつと小さな竹の鞭と取り替え、付近で待ち構える警察に自分が判別できないようにする。そしてヴィルフォールに対し、自分への訪問と二人の会話は完全に秘密にすること、夜に家の裏口を通ってマルセイユへ戻ること、従順で、おとなしく、無害なままでいることを厳命し、もし再び政情がボナパルト派に有利に傾いた場合、ヴィルフォールの服従が彼の経歴と地位を保証すると約束する。ノワルティエが立ち去った後、動揺したヴィルフォールは父の訪問の痕跡をすべて消し去り、それからマルセイユへの帰路につき、その道中でナポレオンがすでにグルノーブルに入ったという知らせを耳にする。
第13章 百日天下
この章は百日天下の物語の幕を開けるもので、エルバ島からのナポレオンの前例のない帰還が、ルイ十八世の危うく復活した王政を即座に持続不可能なものとする出来事として描かれている。ヴィルフォールが罷免を免れたのは、宮廷における強力なボナパルト派の大物であるその父ノワルティエの力添えあってのことである。彼はレジオン・ドヌール勲章を授与される(ただし、慎重な彼はこれを佩用することを辞退する)。一方、現職の王の検事(プロキュリュール)は王党派寄りだと嫌疑をかけられて解任される。ナポレオンがテュイルリー宮に再び入り、ルイ十八世の置き去られた半分だけ残った嗅ぎ煙草入れを机の上に発見した直後、マルセイユでは公式の弾圧にもかかわらず騒乱が勃発する。長年くすぶり続けていた南仏のボナパルト支持感情が再燃し、小規模な内戦状態へと発展して、群衆は目に見える王党派の人々を襲撃するようになる。
百日天下の始まり、ヴィルフォールの地位維持、そしてマルセイユの動揺
百日天下の開始は、地域の権力力学を変化させ、ダンテーズの釈放のためのわずかな糸口を生み出す。船主モレルは、個人的に穏健派ではあるものの、ボナパルティストたちの間で十分な影響力を獲得し、正式に元使用人のために尽力するようになる。ヴィルフォールは副検事長のポストにとどまるが、サン=メラン嬢との近い将来の結婚を意図的に延期する。最終的に勝利する政権に味方することが自らのキャリアをより有利に進めると計算しているためである。モレルが事務所に嘆願に訪れた時、彼は依然としてマルセイユの最高位にある裁判官のままでいる。
ダンテスの釈放に向けたモレルのヴィルフォールへの正式な請願
モレルは正式にヴィルフォールにエドモン・ダンテスの釈放を請願し、ダンテスが以前咎められていたボナパルト派との繋がりは、今や復活を遂げたナポレオンへの忠誠の証となるのだと主張する。ヴィルフォールは最初ダンテスの件について何も知らないふりをし、次にダンテスは遠方の刑務所に移されたとうそぶき、最終的には皇帝への愛国的尽力を大げさに称える嘆願書を大臣宛てに起草し、これに署名してやる旨を提案する。ヴィルフォールはその嘆願書さえ出せば必ずダンテスの釈放が叶うと請け負う。しかし実際には、ヴィルフォールは署名済みの嘆願書を握り潰して隠し、ブルボン王朝の二度目の復活を待ち望んでいる。そうすれば、ダンテスと、彼が抱えている危険な秘密を永久に葬り去ることができるからだ。
ダンテスの長期投獄と周囲の人物たちのその後
ダンテスは依然として投獄されたままであり、自分の牢獄の外で繰り広げられている政治の激変には気づいていない。モレルは百日天下の間にダンテスの釈放を求める嘆願をさらに二度行うが、ワーテルローの戦いでのナポレオンの敗北を受け、すべての努力を断念する。ルイ18世が王位に復位すると、ヴィルフォールはトゥールーズで王の検察官という新しい地位を獲得し、その直後にサン=メラン嬢と結婚する。ダングラールは、ナポレオンの帰還後にダンテスから復讐されることを恐れて、マルセイユでの地位を捨て、マドリードに移り、スペインの商人のために働くことになる。フェルナンは、恋敵が戻ってきたならばダンテスを殺し、その後に自身も死に赴くと決意していたが、軍に徴兵される。出発する際のメルセデスへの献身的な振る舞いが彼女の感謝の気持ちを引き出し、ダンテスは決して戻らないだろうという希望を彼に抱かせる。メルセデスは孤立し、悲嘆に暮れたまま取り残され、自殺まで追い込まれるが、宗教的な信仰によって踏みとどまる。ダンテスの年老いた父親は息子の逮捕から五か月後に悲嘆のあまり亡くなり、モレルがボナパルト支持派の強い南部で大きな個人的危険を冒しながら、彼の葬儀費用と少額の借金を肩代わりする。
第14章 二人の囚人
ルイ18世の復位から1年後を舞台として、本章は刑務所監察長官によるシャトー・ディフへの訪問を描いている。そこにはエドモン・ダンテスとアベ・ファリアという2人の長年の囚人が投獄されている。
監獄査察官の到着と初回査察
監察官はまず上階の牢獄房の視察を行い、良行や危険性が低いことを理由に恩赦を推薦された囚人たちを訪ねた。囚人たちは一様にひどい食事を不満に訴え、釈放を求めていた。長官は、より危険で精神的に不安定な囚人たちは下階のもっと厳重な牢獄に収監されていると説明した。監察官は、長官、看守二人、武装した兵士二名を伴って安全を確保しながら、悪臭が立ちこめ暗く湿った階段を下り、下階の囚人たちの視察を始めた。
エドモン・ダンテスの裁判と公正な審理の嘆願
監察官が下層の牢獄で最初に立ち寄るのは、エドモン・ダンテスの独房である。起訴されることなく十七か月間(一八一五年二月二十八日から)拘留されているダンテスは、身を投げ出して監察官に公正な裁判を懇願する。有望な海軍での経歴、愛する女性との間近に迫った結婚を失い、老いた父の消息も途絶えていることを説明しながら、自分の運命の不確かさは、いかなる罪に見合う罰よりも過酷な刑罰だと主張する。監察官は彼の嘆願に心を動かされ、事件を再調査することを約束し、彼に対する記録の提出を求める。監察官はダンテスの書類に、彼をエルバ島からの帰還に関わった危険なボナパルト党員と記し、厳重な監視を要する旨の追記があることを発見する。既存の告訴を覆すことはできないため、監察官はその記載に「対応すべき事項なし」と書き記す。ダンテスはやがて釈放されるという希望に胸を満たして、この場を去る。
アベ・ファリアの独房査察と財宝の提案
次に、監察官はアベ・ファリアの牢獄を訪れる。ファリアはかつてスパーダ枢機卿の秘書官を務めていた人物で、1811年から投獄されており、気まぐれで狂気じみた行動で知られている。監察官は、ファリアが牢獄の中央で複雑な幾何学の計算に没頭しているのを見つける。ファリアは莫大な隠された財宝を発見したことを明かし、自由と引き換えに政府に数百万フランを提供し、役人が財宝の所在を確認するため取りに行く間、自分は投獄されたままでいることさえ提案する。所長と監察官は彼の主張を狂人のたわごととして一笑に付し、ファリアは彼らの拒絶にいらだちながら計算を再開し、彼の提案は完全に無視される。
査察後のダンテスへの余波
検察官の訪問以来、ダンテスは時間の感覚を取り戻し、訪れた日付(1816年7月30日)を壁の漆喰の欠片で牢獄の壁に刻み込み、再び収監の日々を見失わないよう一日一日を数え始めた。最初は二週間での釈放を期待していたが、次には三ヶ月、その先は六ヶ月へと期待を延ばし、ついには十ヶ月半もの間、検察官からの連絡を一度も得られないまま待ち続けるうちに、検察官の約束はただの夢だったのだと信じるようになる。訪問から一年後、 Château d'If(イフ城)の所長がハムの要塞へ転任となり、ダンテスの看守も一緒に連れて行ってしまう。新たに着任した所長は囚人の名前を覚えようとせず、ただ部屋番号だけを把握するため、ダンテスは名前を持つ人間から単なる「34番」へと格下げされる。
第15章 34番と27番
この章は、エドモン・ダンテスがイフ城での数年に及ぶ獄中生活の心理的旅路を記録したものであり、穏やかな希望に満ちた無邪気さから、完全な絶望、精神的な危機、自殺を決意するまでの転落、餓死寸前、そして思いがけなく同じ囚人を発見し自由のために闘う意志が再燃するまでを描いている。第十五章。34号と27号 ダンテスは隣の囚人がトンネルを掘る作業を止めたかどうかを確認しようとし、前日までの三日間、隣の独房からまったく音がしないことに気づく。そのため、隣人は自分を信用していないのだと考える。ダンテスは気力を失わずに一晩中トンネルを掘り続けるが、二、三時間後、予期せぬ障害に突き当たる。掘った穴を塞ぐように滑らかな鉄の梁が横たわっており、それを迂回するため梁の上か下を掘らなければならないが、それは彼が想定していなかった事態だった。絶望に打ちひしがれたダンテスは神に祈りを捧げるが、その直後、下の方からくぐもった、まるで墓場のような声が、神と絶望を同時に口にする彼に問いただす。声の主はダンテスに問いかけ、エドモン・ダンテスという19歳のフランスの船乗りで、1815年2月28日以来皇帝の復位を助ける陰謀という濡れ衣で投獄された人物であることを聞き出す。ダンテスは、声の主が1811年から投獄されており、自分より四年も長く服役していることを知る。その男もまたトンネルを掘っていたが、角度の計算を誤り、海に近い外壁ではなく城塞の内壁を掘り当ててしまったため、近隣のドーム島やティブラン島まで泳いで脱出するという最初の計画を台無しにしていた。男はダンテスにトンネルの掘削をすべて止めて合図を待つよう命じ、ダンテスは男を捨てないでくれと懇願し、拷問で死に追いやられても看守に男の存在を明かさないと固く誓う。ダンテスの若さと誠実さに安心した男は手を貸すことに同意し、次の日まで待つように告げる。ダンテスは獄中で二度と一人にならないという見通しに歓喜し、二人の秘密の連絡が発覚したなら水差しで看守を殺害すると決意する。
第15章 34番と27番
この章は、エドモン・ダンテスがイフ城に投獄された数年間にわたる心理的な変遷を克明に記録している。希望に満ちた無垢な状態から完全な絶望へと沈み落ちていくさま、精神的危機、自死を決意するに至るまでの覚悟、飢餓による死の淵、そして自由の奪還のために再び闘う意志に火をつけてくれる囚人仲間との予期せぬ邂逅までを、描き出している。
ダンテスの苦悶、霊的葛藤、自殺の決意
改善された処遇や仲間を得るために人間界の権力者へのあらゆる訴えを尽くした後、ダンテスは深刻な精神的苦痛の循環に陥る。彼はまず自分の無実を自覚する誇りにすがりつき、次に自分の無実そのものに疑いを抱き、やがて神への祈りを捨てて看守への切なる嘆願に転じたあげく、最終的には再び宗教的信仰に立ち戻る。しかし祈りが聞き届けられることなく、彼は怒りと神への冒涜に落ち入り、独房の壁に激しく当たり散らす。彼は不当な投獄に執着し、自分の苦しみは神の懲罰ではなく人間の敵意から生じていると結論づけ、やがて死こそが果てしない悲惨からの唯一の救済であると決心する。そして首吊りは海賊の末路にも等しい不名誉な死であるとして退け、方法として餓死による自殺を選ぶ。
ダンテスの断食と臨死体験
ダンセスは断食を決行し、自分自身に立てた誓いに縛られて一度も口をつけず、一日に二度、牢獄の小さな窓から日々の配給食を外へ投げ捨てる。日を重ねるごとに、容赦のない飢えが彼を責め苛み、彼は死への決意と生きたいという本能の間で何度も揺れるが、ついに力尽きる。起き上がることもできず、目も耳もはっきりとしなくなるほど衰弱し、看守は彼が危篤ではないかと恐れるが、ダンセスは死が近いことを望む。踊るように揺らめく光のぼんやりとした幻覚を伴う昏睡状態に陥り、自分ではこれが最後の死への境目に違いないと信じる。
ダンテスが壁からの異音に気づき、同房の囚人の存在を確認する
ダンテースが死の淵に瀕していたとき、牢獄の壁越しにかすかで絶え間のない引っ掻くような音が聞こえてきた。その音が、囚獄の長によって認可された作業員が隣の地下牢を修理している音なのか、それとも脱走を試みている仲間の囚人の音なのか分からず、彼はその正体を確かめるために壁を叩いてみることにした。すると引っ掻く音はすぐに止まり、認可された作業員ではなく、自由を得ようとするもう一人の囚人だと確信した。この小さな希望の火が彼の心に再び命を吹き込み、壁の向こう側からの次の音を一心不乱に耳を澄ませて待ち構えた。
ダンテスが道具を手に入れ、刑務所の壁の掘削を始める
ダンテスは、隣の囚人に届くよう壁を掘り進むための道具を独房の中を探すが、鋭い器具は一向に見つからない。ところがある時、誤って水差しを割ってしまい、その鋭い破片をベッドに隠しておく。 壁の粗い石の間を埋める漆喰(しっくい)が湿気で脆くなっていることに気づいた彼は、看守が席を外している昼間にそれを削り取り始める。しかし道の先に大きな切り石が塞いでいるのを発見し、水差しの破片では動かすことができないと悟る。 そこで看守を巧みに言いくるめて鉄の鍋を独房に残させることに成功した彼は、鍋の鉄製の取っ手をてこに用いて石を剥がし、壁に小さな空洞を穿(うが)つ。その後も看守に気づかれぬよう、さらに多くの石や漆喰を取り除く作業を精力的に続ける。
第15章 34番と27番
第15章 34号と27号 ダンテスは隣の囚人が掘削作業を止めたかどうか確かめようとするが、隣の独房はここ三日間まったくの沈黙を保っているため、隣人は自分を信用していないのだと考えるようになる。彼は気落ちすることなく夜通し掘り続けるが、二、三時間後、思いも寄らぬ障害に遭遇する。滑らかな鉄の梁が掘った穴を塞いでおり、それを避けるには梁の上か下を掘らなければならないが、それはまったく想定外のことだった。絶望に打ちのめされた彼は神に祈りを捧げるが、その直後、下から空洞のようなくすんだ声が響いてきて、彼が神と絶望を同時に口にしたことを問いただす。その声は彼を取り調べ、彼が1815年2月28日以来、皇帝の復帰を助ける陰謀を企てたという無実の罪で投獄されている、19歳のフランス人水夫エドモン・ダンテスであることを聞き出す。ダンテスもまた、その声の持ち主が1811年から——自分より四年も長く——投獄されている男であることを知る。その男も同様に掘削を試みたが、角度の計算を誤り、海に面した外壁ではなく城塞の内壁に突き当たって掘り進めてしまい、近くのドーム島やティブラン島まで泳いで逃げようという当初の脱出計画を台無しにしていた。男はダンテスに掘るのをすべてやめて自分の合図を待てと命じ、ダンテスは彼を捨てないでくれるよう必死に訴え、たとえ拷問で死に至っても看守たちに男の存在を絶対に明かさないと固く誓う。ダンテスの若さと真心に心を動かされた男は助力することを了承し、明日まで待つようにと言う。もう牢獄の中で独りきりではないという見通しにダンテスはこの上ない喜びを感じ、もし二人のやり取りの秘密が暴かれたなら水差しで看守を殺害してでも守り通そうと心に決める。
トンネル掘削の挫折と27番との最初の交流
坑道の挫折とNo.27との最初の接触 ダンテスは隣人の坑道掘りの様子を見に行く。隣の独房から三日の間まったく物音がしないことに気づき、それを隣人の不信の表れだと受け取る。夜通し掘削を続けるが、数時間後に予想外の鉄の梁にぶつかって進む手を阻まれ、絶望に暮れる。神に救いを請う祈りをささげていると、地下の坑道のほうから声が返ってくる。その声は、神への祈りと絶望を同時に口にするダンテスに不審を抱く。声はダンテスに身元を問い、1815年二月から皇帝復権を企てた無実の陰謀の罪で投獄されている無実のフランス人水兵であることを聞き出す。そして自分も囚人であり、No.27と名乗る、1811年から投獄されている男だと明かす。No.27は坑道の角度を誤って計算し、外側の海に面した壁ではなく、要塞の内壁にぶつかってしまったこと、近隣の島々まで泳いで脱出するはずだった計画が頓挫してしまったことを説明する。彼はダンテスに掘るのをやめ、彼の合図を待つよう命じ、ダンテスはたとえ拷問を受けても看守にNo.27の存在を漏らさないと固く誓う。ダンテスの若さと誠実さに胸を打たれたNo.27は、助けることを承諾し、明日まで待つよう伝える。それを聞いたダンテスは、仲間を得られるかもしれず、しかも脱走の可能性も繋がったことに、希望の思いで胸がいっぱいになる。
同盟の確認と27番の独房への侵入
同盟の確認と27番の房への入室 ダンテスは翌日を27番からの合図を待ちながら不安な気持ちで過ごす。途中まで掘ったトンネルは入念に隠し、夕方に看守が訪ねてきたときには、疑いを招かぬよう平静を装う。しかし看守は彼の奇妙な態度に首をかしげる。翌朝、ダンテスがベッドを壁際に戻してトンネルへ手を伸ばそうとしたとき、向こう側から小さく三回ノックする音が聞こえてきた。27番が待っているという合図だった。ダンテスは看守が夕方まで戻らないことを27番に告げ、これで邪魔の入らない十二時間の作業時間が確保できたことを伝える。27番はダンテスの房の床から掘り始め、まもなく壁を突き破って姿を現し、軽やかにダンテスの房へ飛び降りてきて、二人の同盟を正式に固める。
第16章 博学なイタリア人
「この章は、シャトー・ディフで互いの独房を隔てる壁を掘り抜いた囚人との、エドモン・ダンテスの待望の再会を中心とする。男の素性を紹介し、ダンテスの独房から可能なすべての脱出経路について二人が行った検討を詳述し、年長囚人の正体と過去を明かし、脱出の是非に関する二人の異なる見解を探り、獄中での数十年に及ぶその囚人の独学と機知に富んだ工夫の数々を示し、そしてダンテスに対して自身の独房での仕事ぶりを見に来るよう誘うことで幕を閉じる。」。
長く待ち望んだ仲間との再会と人物描写
ダンテスは長いこと会うことを待ち望んでいた同房の囚人を抱きしめ、格子の間から差し込むほのかな光のもとでその顔がよく見えるよう、窓辺へ連れていった。その男は背が低く、髪は年齢のせいではなく苦しみによって白く、灰色の太い眉の下には深くくぼんだ鋭い目、胸まで届く長い黒ひげ、そして痩せて深く皺の刻まれた顔には、肉体労働ではなく精神の刻苦によって形作られた面貌の痕が浮かんでいる。六十歳から六十五歳ほどにみえるが、その敏捷で力強い動作は、見かけの上での老いが歳月の経過によるものではなく、長期にわたる囚われの暮らしがもたらしたものにすぎぬことを語っていた。男はダンテスの熱心な歓迎を明らかに喜びながら受け入れるが、しかしその顔には、丹精込めて企てた脱出が失敗に終わり、待ち望んでいた自由のかわりに予期せぬ新たな牢獄へ彼を突き落としたことへの嘆きが滲んでいた。
牢獄からの脱出ルートの評価と窓の検査
同房の囚人はまず、ダンテが自分を通すために取り外した緩んだ石を元に戻して入口を隠すよう強く主張する。将来の安全は、看守たちが二人の牢の繋がりに気づかないかどうかにかかっていると指摘する。次に彼は、自分で掘削道具(ベッドの留め金から鍛造した鑿、鑷子、てこ)を作り、砦の外壁と海に到達することを目指して50フィートのトンネルを掘ったことを明かす。しかし幾何学的な道具を持ち合わせていなかったため角度の計算を誤り、ダンテの牢の外側で、兵士で満ちた中庭に面する廊下に辿り着いてしまったと打ち明ける。その後、彼はダンテの牢の窓を調べ、ダンテの肩の上に登って鉄格子の隙間から覗き込み、窓は絶えず衛兵が巡回している開けた回廊に面しており、窓からの脱出は不可能であることを確認する。
アベ・ファリアの身元と投獄の背景の明かし
窓からの脱出経路が実用的でないことを確認した後、年長の囚人は自分がアベ・ファリアであることを明かす。彼は1811年以来イフ城に投獄されており、それ以前は3年間フェネストレル要塞に拘留されていた。ファリアは1811年、およそナポレオンの息子がローマ王に即位した頃にピエモンテからフランスへ移送されたと説明し、4年後にナポレオンが打倒され、現在ルイ18世がフランスを統治していることを知って衝撃を受ける。さらに、ファリアはイタリアを単一の大帝国に統一するという歴史上の政治的統一の動きを研究した後に練り上げた計画――その政治的野望のために投獄されたのだと打ち明け、そして自分がイフ城の見学客に娯楽として披露されている、あの「狂った神父」であることを認める。
脱出に関する倫理の議論とダンテスの脱出計画案
ダンタンはファリアに脱出の試みを再開するよう強く促し、ファリアがすでに掘り進めているトンネルから廊下へと横穴を掘り、巡回中の歩哨を殺害して二人で共に脱出するという案を持ちかける。ファリアはこれを拒否し、自らの道徳的な良心の呵責について次のように説明する。すなわち、彼は長年にわたり、トンネルを掘る行為を人間に対してではなく、命のない牢獄の構造物に対する戦いだと考えてきたため、自由を得るために殺人を犯すことにはどうしても踏み切れないというのだ。さらに彼は、人間には生あるものの命を奪うことへの自然な嫌悪感があり、そのためダンタンもこれまで一度として看守を襲うことを考えつかなかったはずだ、と主張する。そして、歩哨を殺害せざるを得ない計画を押し進めるのではなく、他者に危害を加える必要のない偶然の脱出の機会を待つべきだと主張する。
ファリアの自作の道具と数十年に及ぶ獄中の学問修業
ファリアは、失敗に終わった脱出の試みに注いだ途方もない努力について詳細に語っている。道具を作るのに四年、トンネルを掘るのに二年を費やし、毎日少しずつ土や岩を取り除いては、瓦礫を階段を壊してすでに詰まった井戸へと投げ捨てて隠した。 それから、獄中の時間を広範な学術研究に費やしたことを打ち明ける。秘密の調合を施した麻布から自作の紙を作り、質素な食事の日に出される魚の頭から軟骨を取ってペンを作り、煤を溶かしてワインと混ぜたインク(特に重要な注釈には自分の血も加えた)で書き綴った。 三年の歳月をかけて、自らのシャツ二枚に『イタリアにおける一般君主制の可能性に関する論考』という四つ折り判の完全な著作を書き上げた。また、かつて五千巻あった蔵書から厳選した百五十冊の内容を丸暗記し、トゥキュディデス、プルタルコス、ダンテ、シェイクスピア、マキャヴェッリといった古典および現代の史家、哲学者、作家たちの全作品を記憶からそっくりそのまま暗唱できる。 さらに五つの現代語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語、スペイン語)を独学し、古代ギリシャ語の知識を活用して現代ギリシャ語も習得し、正式な学習教材なしで練習するために独自の語彙を自ら作り上げた。
ファリアがダンテスを自室の研究に案内する
ファリヤの知性と機転の利さに驚嘆したダンテスは、すぐに彼の書き上げた著作や学問の資料を見たいと熱心に頼み込む。ファリヤは承知し、何十年もの獄中での学問と研鑽の成果を見せるため、トンネルを抜けて自分の牢房までダンテスをついて来るよう誘う。
第17章 司祭の部屋
エドモン・ダンテスは、イフ城の地下牢に幽閉されている仲間の囚人ファリア司教の独房に入るため、細い地下通路を進む。この章では、ファリアが通路を作るために何年もかけて行った掘削作業、自作の道具や隠した caches(隠し場所)、ダンテスが自身の人生と不当な投獄について語る場面、そしてダンテスの敵や不当な裁判の背後にある秘密の動機をファリアが推理する場面が描かれる。この章の区間では、エドモン・ダンテスが不当な投獄の真実を明らかにし、仲間の囚人ファリア司教から広範な教育を受け、牢獄の回廊の下に脱出トンネルを建設する作業を行い、高齢のファリアが逃亡不能な衰弱性のカタレプシー発作を起こした後、生涯にわたる忠誠の誓いを立てる様子が描かれている。
第17章 アベの居室
エディモン・ダンテスは、イフ城で同じく囚人となっているファリア神父の牢獄に入るため、狭い地下通路を進んでいく。この章では、二人の会話を通じて、ファリアが通路を作るために何年もかけた掘り起こしの作業、自作の道具や隠した隠し場所について語られ、さらにダンテスが自身の人生と不当な投獄について語り、最後にファリアがダンテスの敵を、そしてダンテスを獄に送り込んだ不当な裁判の背後にある秘密の動機を推理する様子が描かれている。
アベの独房到着と発掘作業の公開
ダンテスとファリアは、ファリアの牢獄へと通じる地下道の突き当たりに到達する。そこから先はさらに狭隘となり、手と膝で這わなければ入れないほどになっている。ダンテスは、ファリアが牢獄の最暗部の一角にある敷石をてこの要領で持ち上げ、掘り進めた末にこの通路を完成させたのだと知る。それは、ダンテスが先にこの牢獄を訪れた際に目にした、あの過酷な作業をやり遂げた結果にほかならなかった。
アベの太陽光による時刻測定法
ファリアは、時計がないにもかかわらず、時刻が十二時十五分であることを正確に言い当て、自分の牢獄の窓から差し込む太陽光の角度を観察し、太陽の周りの地球の楕円軌道に沿った壁の印と照らし合わせることで時刻を把握していると説明する——それは壊れたり狂ったりする可能性のある機械式の時計よりも信頼できる方法だと彼は主張する。ダンテスは地球の二重運動に関するファリアの説明を理解できない。なぜなら彼はいつも、太陽が静止した地球の周りを回っているのだと信じてきたからだ。
最初の隠された宝:文献と手作りの道具
ファリアは最初のかくし場所を明らかにする。それは使われなくなった暖炉の炉石の下にあり、68枚の細長い布片に記されたイタリアの君主制に関する学問的な著作の完成版が収められている。その布は引き裂かれたリンネルのシャツとハンカチの生地で、判読可能なイタリア語で書かれており、獄を出られた暁には出版したいとファリアは願っている。また彼は、古い鉄の燭台から作り上げた手製の道具も披露する。鋭い小型ナイフ、切断と刺突を兼ね備えた二刀流のナイフ、小さな棒に軟骨を結びつけて作ったペン、そして自家製の獣脂ランプ、火打石、そして硫黄である。これら火起こしの道具は、皮膚の病気を装って手に入れたものだった。ダンテスはファリアの忍耐強さと創意工夫に圧倒される。
第二の隠し場所と縄の脱出はしご
ファリアはダンテスを、ベッドの頭側にある二つ目の隠し場所へ導く。ぴったりと嵌まった石で隠されたその中に、長さ約七メートルから九メートルの縄ばしごが入っている。これはフェネストレルの牢獄で三年の服役中に、シャツやシーツから引き裂いた布地を編んでファリアが作り上げたもので、発見されないよう鋭く研いだ魚の骨の針で縁を丁寧に縫い直してある。ファリアは語る。当初はこのはしごを使って自分の牢屋の窓から脱出するつもりだったが、降りたところが囲いのある中庭にすぎないことに気づき、計画は断念した。はしごは予期せぬ機会のためにとっておかれたのだと。
ダンテが人生を語り、アベが敵を推理する
ダンテスはファリアに自分の人生のすべてを打ち明ける。『ファラオン』号における一等航海士としての経歴と、船長への昇進が目前に迫っていたこと、メルセデスとの婚約、ボナパルト党クラブ宛ての手紙を携えた航海から戻った際の逮捕、そしてイフ城でのその後の投獄——どれほどの間囚われの身となっているのか、彼には記憶がなかった。ファリアは論理的な推理によってダンテスの敵たちを見抜く。積み荷監督官ダングラールは、船長の座を奪い、ライバルを排除するために彼を陥れた。カタロニア人でメルセデスの求婚者フェルナンは、彼女の心を得るためにダンテスを取り除くことを共謀した。そして酔いどれの仕立屋カデリュースは、濡れ衣を着せる策略を企てる彼らの密会に立ち会っていた。
不公正な裁判の発覚とヴィルフォールの父親の秘密
ダンテースはファリアに、なぜ一度も裁判にかけられず正式な判決も下されなかったのかを説明してくれるよう求める。ファリアは匿名の告発状が左利きで逆向きに書かれたものであり、ダンテースがダンルグラが右利きであることを知っていた知識と合致することを確認し、ダンルグラが偽の手紙を書いたことを証明する。ダンテースは彼を尋問した代理検事ド・ヴィルフォールが、彼に対する唯一の証拠(パリのノワルティエ氏宛ての手紙)を焼き捨て、ダンテースにノワルティエの名前を絶対に口に出さないよう誓わせたことを明かす。ファリアはノワルティエがド・ヴィルフォールの父親であり、かつてのボナパルト派のジロンド党員であったことに気づき、ド・ヴィルフォールが自分の一族の政治的つながりを隠すためにその手紙を処分したと悟る。この事実はダンテースの魂の根源を激しく揺さぶるのだった。
第17章 司祭の部屋
この章の節では、エドモン・ダンテスが、自分が無実の罪で投獄された真相を解き明かし、同じ獄中での仲間であったアベ・ファリア神父から幅広い教育を受け、刑務所の回廊の下に脱出用のトンネルを掘り進めるために尽力し、やがて年老いたファリアが衰弱性のカタレプシー発作に襲われて逃げることができなくなった後、ファリアへの生涯にわたる忠誠を誓う姿が描かれている。
ヴィルフォールの裏切りの暴露
ヴィルフォールの裏切りの発覚 アベ・ファリアは、ダンテスの投獄を担当した検察官がノワルティエ・ド・ヴィルフォールの息子であるジェラール・ド・ヴィルフォールであることを明かす。この暴露によって、ダンテスの逮捕に関する数々の不可解な点が説明される——取調べにおけるヴィルフォールの奇妙な態度、ダンテスの無罪を証明するはずの手紙を破棄した行為、ダンテスに対する約束の要求、そして罰するような調子ではなく、ほとんど哀願するかのような口調であったことである。この事実に衝撃を受けたダンテスは、一人で情報を整理するため自分の独房に戻り、数時間にも及ぶ瞑想を経て、恐ろしい決心を固める。
ファリアの復讐への警告
「復讐に対するファリアの警告」 無害な奇人という評判のおかげで得られた特権として、日曜日の食事にダンテスを招いた後、ファリアはヴィルフォールの裏切りを明かしたことを後悔する。それはダンテスの心に復讐への欲望を燃え上がらせてしまったからだ。ダンテスはその話題を軽くあしらってしまうが、若い仲間の心に芽生えた新たな激情をファリアは嘆きつつも、別の事柄について語り合うことに同意する。ダンテスを長きにわたって魅了してきた、自らの人生経験から得られた無欲で艱難辛苦の末にたどり着いた洞察を伝えながら。
ダンテーの教育
ダンテスの教育 ダンテスはファリアに頼み、莫大な知識を教えてほしいと申し出る。それはファリアの退屈を紛らわすため、そして二度と脱獄について口に出さないという約束と引き換えのことだった。ファリアはこれに応じ、二年もあれば、数学・物理学・歴史の基礎原理と、自分の知る三つないし四つの近代語を授けられるだろうと見積もる。驚異的な記憶力、鋭い知性、海事に関する経歴、そしてイタリア語とロマヤ方言の既存の知識を備えたダンテスは、めきめきと力をつけていく。六ヶ月足らずでスペイン語、英語、ドイツ語を習得し、一年も経つ頃には、教養豊かで洗練された立派な人物となる。その間も、脱走の計画について語らないという約束を一度も破ることはなかった。